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ベーコンのノヴム・オルガヌムの話法

ベーコンのノヴム・オルガヌムの話法

「イドラ」と帰納法

フランシス・ベーコンの『ノヴム・オルガヌム』(1620年)は、経験論的な科学的方法を提唱する書物として、西洋思想史において重要な位置を占めています。ベーコンは、従来のアリストテレス主義に基づく演繹法を批判し、観察と実験を通して自然の法則を明らかにする帰納法を提唱しました。

四つのイドラ

ベーコンは、人間が正しい認識を得ることを妨げる要因として、「イドラ」(idola、幻影)を挙げ、四つの種類に分類しました。

* **種族のイドラ**: 人間の感覚や知性の本性に由来する誤謬。
* **洞窟のイドラ**: 個人の経験や知識、偏見などによって生じる誤謬。
* **広場のイドラ**: 言語の不完全さや誤用によって生じる誤謬。
* **劇場のイドラ**: 過去の哲学や学説などの権威に盲従することによって生じる誤謬。

帰納法の三段階

ベーコンは、イドラを取り除き、正しい認識に到達するために、以下の三段階からなる帰納法を提示しました。

* **第一段階**: まず、可能な限り多くの事例を観察し、事実を収集する。
* **第二段階**: 収集した事実を比較し、共通点や相違点を分析する。
* **第三段階**: 分析に基づいて、仮説を立て、さらに実験によって検証する。

アフォリズム

『ノヴム・オルガヌム』は、短い断片的文章である「アフォリズム」(aforismi)と呼ばれる形式で書かれています。各アフォリズムは、特定のテーマに関する主張や考察を含んでおり、番号が振られています。この形式は、体系的な議論よりも、読者に思考を促すことを目的としています。

比喩表現

ベーコンは、自身の主張を明確に伝えるために、比喩表現を多用しています。例えば、彼は、従来の演繹法を「クモの巣」に、帰納法を「ミツバチ」にたとえています。クモは自分の体から糸を吐き出して巣を作りますが、ミツバチは花々から蜜を集め、それを加工して蜂蜜を作ります。この比喩は、演繹法が空虚な概念操作に終始するのに対し、帰納法は経験に基づいて確実な知識を構築することを示唆しています。

これらの要素を通して、ベーコンは『ノヴム・オルガヌム』において、従来の学問のあり方を批判し、経験と理性に基づく新しい科学的方法を提唱しました。

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