画: 1894年版『高慢と偏見』挿絵高慢と偏見
一言での本質
機知に富み、誇り高い次女エリザベスと、裕福だが高慢に見える紳士ダーシー。二人は、最初の出会いで互いに反発しあう。エリザベスはダーシーの『高慢』を嫌い、ダーシーはエリザベスを見下す。だが、誤解と偏見の積み重ねの奥に、二人は、しだいに相手の本当の姿を見出していく。第一印象の『高慢』と『偏見』が、いかにして解け、本物の理解と愛へと変わっていくか——結婚をめぐる人間模様を通して、人が人を正しく知ることの難しさと喜びを描いた、恋愛小説の傑作である。
この作品の背景
「高慢と偏見」は1813年に刊行された、ジェーン・オースティンの代表作だ。舞台は、19世紀初頭のイギリスの地方。物語の中心にあるのは『結婚』だ。当時、財産を持たない女性にとって、良い相手と結婚することは、生涯の安定を左右する、ほとんど唯一の道だった。
ベネット家には五人の娘がいるが、家の財産は、法律により男系の親戚に相続されることになっている。娘たちは、結婚しなければ将来の生活の保証がない。そんな中、近所に裕福な独身紳士ビングリーと、その友人で大富豪のダーシーがやってくる。聡明で物おじしない次女エリザベスは、舞踏会でダーシーの高慢な態度に強い不快感を抱く。一方ダーシーも、身分の違いからエリザベスを軽んじる。だが、二人の関係は、反発から始まって、思いがけない方向へと展開していく。
物語の構造
- 結婚という課題財産を相続できないベネット家の五姉妹にとって、良い結婚は生涯の安定を左右する重大事だった。
- 第一印象の反発舞踏会で、エリザベスはダーシーの高慢な態度を嫌い、ダーシーは彼女を見下す。
- 偏見の深まりエリザベスは、ある男の嘘を信じ、ダーシーへの悪い印象をさらに固めていく。
- 誤解の氷解ダーシーの手紙と真実の発覚により、エリザベスは自分の偏見の誤りに気づき始める。
- 理解と愛互いの本当の姿を知った二人は、高慢と偏見を乗り越え、本物の理解に基づく愛へと至る。
現代の働く人への示唆 解釈
題名の『高慢』と『偏見』は、二人の主人公の欠点を、正確に言い当てている。【解釈】ダーシーの欠点は『高慢(プライド)』だ。彼は、生まれと財産から、自分を高く見積もり、身分の低い人々を無意識に見下している。一方、エリザベスの欠点は『偏見(プレジュディス)』だ。彼女は、第一印象でダーシーを『嫌な男』と決めつけ、その色眼鏡を通してしか彼を見られなくなる。この物語は、二人が、それぞれ自分の欠点——高慢と偏見——を自覚し、乗り越えていく過程の物語なのだ。
エリザベスを誤らせたのは、『第一印象』への過信だった。【解釈】彼女は、聡明で、人を見る目に自信がある。だが、その自信ゆえに、ダーシーへの最初の悪い印象を、絶対に正しいと思い込んでしまう。そして、その印象に合う情報(ダーシーを悪く言う男の話)ばかりを信じ、合わない情報を退ける。人は、一度抱いた印象を裏づける証拠ばかりを集めてしまう。エリザベスの誤りは、彼女が愚かだからではなく、むしろ、自分の判断力を過信したからこそ生じた。賢い人ほど、自分の第一印象を疑わない、という落とし穴を、この物語は鋭く突いている。
二人の和解は、互いが『自分の欠点を認めた』ときに訪れる。【解釈】ダーシーは、エリザベスに拒まれたことで、自分の高慢さを初めて省みる。エリザベスは、ダーシーの手紙で真実を知り、自分の偏見の浅はかさを恥じる。重要なのは、相手が変わったから愛したのではなく、二人がそれぞれ、自分自身の欠点と向き合い、成長したことだ。本当の愛は、相手を理想化することからではなく、自分の未熟さを認め、相手を正しく理解することから生まれる。だからこの物語の結末は、単なるハッピーエンドではなく、二人の人間的な成長の到達点なのである。
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