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複数の作品を、同じ問いや主題から読み比べる横串の批評記事です。
- 偽装の系譜——ハムレットの狂気、葉蔵の道化、檸檬の悪漢一冊だけ読んでいては見えない発見がある。シェイクスピアの王子は狂気のふりをし、太宰の葉蔵は道化を演じ、梶井の「私」はなに食わぬ顔で爆弾犯のふりをする。300年離れた三つの「ふり」を一枚に並べると、偽装という生存技術の系譜図が浮かび上がり、三作の結末がなぜああなったのかが、一つの法則で説明できてしまう。
- 人はなぜ罪を語らずにいられないのか罪は、隠せば消えるものではない。ラスコーリニコフは理屈で自分を守ろうとし、カラマーゾフ家の人々は責任を押しつけ合い、先生は手紙でしか告白できず、イワン・イリイチは死の前で人生の嘘を見てしまう。四つの作品を並べると、罪とは法律違反だけではなく、自分の物語を最後まで引き受けられるかどうかの問題だと見えてくる。
- 怪物は本当は何を映しているのか怪物は、外から襲ってくるだけの存在ではない。フランケンシュタインの怪物は作った者の責任を映し、ドラキュラは共同体の恐怖を集め、ジキルとハイドは分けたはずの欲望の戻り方を見せ、ドリアン・グレイは美しさの裏にしまった腐敗を肖像へ押し込める。四つを並べると、怪物とは人間が自分の中に置けなかったものの姿だとわかる。
- 子どもの目には世界がどう見えるのか子どもが主人公の物語は、かわいい冒険では終わらない。アリスは大人の言葉の奇妙さを暴き、アンは想像力で孤独な現実を塗り替え、トム・ソーヤーは遊びで社会の規則をすり抜け、セーラは貧しさの中で尊厳を手放さない。四つを並べると、子どもの視点は未熟さではなく、大人の世界を相対化する批評の装置だと見えてくる。
- 恋はなぜ人の目を曇らせるのか恋愛小説は、好きになった二人の話だけではない。アンナは家庭と社交界の視線に追い詰められ、エマは物語の中の恋に現実を合わせようとし、エリザベスは偏見をほどき、ロミオとジュリエットは世界の敵意を恋の速度で突破しようとする。四つを並べると、恋とは相手を見る力であると同時に、世界を見誤る力でもあるとわかる。
- お金は人をどこまで変えるのかお金は、ただの交換手段ではない。国富論は社会を動かす見えない仕組みを語り、クリスマス・キャロルは金に閉じた心の回復を描き、大いなる遺産は財産が自己像を変える怖さを示し、互いの友は遺産とごみ山の周囲に人間関係が群がる様子を見せる。四つを読むと、お金は財布の中ではなく、人が自分をどう説明するかの中に入り込むものだとわかる。
- 政治を読むと暮らしはどう見えるのか政治思想の古典は、遠い制度論ではない。国家は正しさと教育を問い、君主論は権力の現実を冷たく見つめ、リヴァイアサンは秩序がなぜ必要かを考え、市民的不服従は従わないことの責任を示し、アメリカのデモクラシーは多数派の力と危うさを読む。五つを並べると、政治とは議会の外側にもあり、職場、学校、家庭の中で人がどう従い、どう逆らうかの問題だと見えてくる。
- 旅に出ると何がはがれ落ちるのか旅の物語は、遠くへ行く話に見えて、実は自分を支えていた前提がはがれる話である。白鯨では海が人間の執念を拡大し、八十日間世界一周では時間と計算が旅を支配し、地底旅行では地面の下に降りることで常識が崩れる。三つを並べると、旅とは景色を増やすことではなく、自分が何に縛られていたかを露出させる装置だとわかる。