ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「オデュッセウスとセイレーン」画: ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス「オデュッセウスとセイレーン」(1891年)

オデュッセイア

ホメロス(紀元前8世紀頃)。古代ギリシャの伝説的な詩人。本作は『イリアス』と並ぶ二大叙事詩の一つで、「帰還」を主題とする。

一言での本質

トロイア戦争を終えた英雄が、故郷へ帰るだけの旅に十年を費やす——怪物、魔女、誘惑、難破。だがこの冒険譚の本当の主題は、英雄が「力で勝つ」のではなく「知恵と忍耐で生き延びて帰る」ことだ。戦って死ぬ英雄像から、耐えて帰る英雄像への転換を、西洋文学の最初期に成し遂げた作品である。

この作品の背景

「オデュッセイア」は、『イリアス』と並ぶホメロスの叙事詩で、トロイア戦争の後日譚にあたる。主人公オデュッセウスは、トロイアを陥落させた知将だが、戦後、故郷イタケーへ帰る海路で神の怒りを買い、十年もの間、帰り着けずにさまよう。

彼の旅は、数々の試練の連続だ。一つ目の巨人キュクロプス、人を豚に変える魔女キルケー、美しい歌で船乗りを惑わすセイレーン、引き止めようとする女神たち。彼はそのすべてを、腕力ではなく機知と忍耐で切り抜ける。一方、故郷では、彼の死を信じない妻ペネロペイアが、群がる求婚者たちを退け続けている。二十年ぶりに帰還したオデュッセウスは、素性を隠して求婚者たちを討ち、ついに妻と再会する。

物語の構造

  1. 漂流トロイア戦争を終えたオデュッセウスは、帰路で神の怒りを買い、十年も故郷に帰り着けずに海をさまよう。
  2. 怪物と誘惑巨人キュクロプス、魔女キルケー、セイレーンの歌、女神の引き止め——彼は数々の試練を、力ではなく知恵で切り抜ける。
  3. 故郷の包囲故郷では、夫の死を信じない妻ペネロペイアが、財産と彼女を狙う求婚者たちの群れを、知恵で退け続けている。
  4. 変装の帰還ようやく帰り着いたオデュッセウスは、すぐには名乗らず、乞食に変装して敵の様子をうかがう。
  5. 再会求婚者たちを討ち果たし、オデュッセウスはついに二十年ぶりに妻と再会する。耐え続けた二人の知恵が、報われる。

現代の働く人への示唆 解釈

『イリアス』の英雄が「戦って栄光を得る」アキレウスなら、『オデュッセイア』の英雄は「耐えて生きて帰る」オデュッセウスだ。彼の最大の武器は腕力ではなく、機知・忍耐・変装だ。彼はしばしば、戦う代わりに欺き、隠れ、待つ。これは、英雄像の歴史的な転換である——死をも恐れぬ武勇から、どんな手を使ってでも生き延びて帰る賢さへ。

オデュッセウスの旅の数々の試練は、人間が乗り越えるべき誘惑の寓話として読める。【解釈】人を豚に変える魔女(欲望に溺れて人間性を失うこと)、忘却の実を食べさせる蓮食い人(過去や目的を忘れること)、美しい歌で船を破滅させるセイレーン(抗いがたい誘惑)。オデュッセウスは、それぞれに知恵で対処する。セイレーンの歌を聞きたいなら、自分を帆柱に縛りつけて、誘惑に身を委ねないまま味わう。誘惑を否定するのではなく、賢く制御する——彼の旅は、欲望との付き合い方の教科書でもある。

物語の目的が、征服でも栄光でもなく、ただ『家に帰ること』であることが重要だ。【解釈】オデュッセウスは、女神カリュプソに引き止められ、不死と永遠の若さまで約束される。だが彼はそれを断り、年老いて死ぬ運命の人間の妻のもとへ帰ることを選ぶ。不死の楽園よりも、限りある人生と、待つ家族のもとへ帰ること。この選択に、ホメロスの価値観が表れている。英雄の到達点は、特別な栄光ではなく、ありふれた我が家なのだ。

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