ナポレオン・サロニー撮影 オスカー・ワイルドの肖像写真: ナポレオン・サロニー撮影 オスカー・ワイルドの肖像(1882年)

ドリアン・グレイの肖像

オスカー・ワイルド(1854-1900)。アイルランド出身の作家・劇作家。唯美主義の旗手として「芸術のための芸術」を掲げ、機知に富む警句で知られる。本作は彼の唯一の長編小説。

一言での本質

美しい青年ドリアン・グレイは、自分の肖像画に「自分の代わりに歳を取り、罪を背負ってほしい」と願う。願いは叶い、彼自身は若く美しいまま、肖像画だけが醜く老い、罪に歪んでいく。外見は永遠に美しく、しかし魂は腐っていく——美と快楽だけを追い、良心を捨てた人間の行きつく先を描いた、唯美主義の寓話である。

この作品の背景

「ドリアン・グレイの肖像」は1890年に発表された。美貌の青年ドリアンは、画家バジルによって、彼の美しさを完璧にとらえた肖像画に描かれる。その絵の前で、彼は「絵のほうが歳を取り、自分はいつまでも若いままだったら」と願ってしまう。

この願いは、なぜか叶ってしまう。ドリアンは快楽と悪徳に身を沈め、人を裏切り、ついには殺人まで犯すが、彼の顔と体は若く美しいまま、少しも変わらない。代わりに、屋根裏に隠した肖像画のほうが、彼の罪の一つひとつを刻んで、おぞましく醜く変わっていく。絵は、彼が見ないようにしている『魂』の姿そのものだった。

物語の構造

  1. 美の発見画家バジルが、青年ドリアンの完璧な美しさを肖像画に描く。
  2. 誘惑享楽主義者ヘンリー卿が、美と快楽こそ人生の全てだとドリアンに吹き込む。
  3. 願いドリアンは『絵のほうが歳を取り、自分は若いままであれ』と願い、それが叶う。
  4. 堕落ドリアンは快楽と悪徳に溺れる。彼の外見は変わらず、肖像画だけが醜く歪んでいく。
  5. 破滅良心の証である肖像画に耐えられず、ドリアンはそれをナイフで突く——そして自らが死ぬ。

現代の働く人への示唆 解釈

肖像画は、ドリアンの『良心』そのものだ。【解釈】人は普通、罪を犯せば、その報いが少しずつ外見や態度に表れる。やつれ、老い、目つきが変わる。だがドリアンは、その変化のすべてを肖像画に肩代わりさせる。彼の顔は無垢で美しいまま、絵だけが残酷さと退廃を刻む。これは、罪の結果から目をそらし続ける人間の心の構図だ。良心は消えてはいない——屋根裏の絵として、確かに醜く変わり続けている。ただ彼が、それを見ないようにしているだけなのだ。

ヘンリー卿の言葉が、ドリアンを堕落させる。【解釈】ヘンリー卿は、機知に富んだ警句で、美と若さと快楽こそが人生の唯一の価値だと説く。「新しい快楽主義(ニュー・ヘドニズム)」——道徳や良心にとらわれず、あらゆる感覚と経験を味わい尽くせ、と。この甘美な哲学は、ドリアンの心に毒のように染み込む。物語は、美と快楽だけを至上とする生き方が、最終的に人間をどこへ運ぶのかを、ドリアンの運命を通して問いかける。それは作者ワイルド自身が掲げた唯美主義への、内側からの問いでもある。

ドリアンは結局、自分自身を殺してしまう。【解釈】物語の最後、罪に耐えきれなくなったドリアンは、醜く歪んだ肖像画を——自分を告発する唯一の証拠を——ナイフで突き刺す。すると、絵は元の美しい姿に戻り、床には、老い、醜く歪んだ姿の、ドリアン自身の死体が横たわっていた。良心を消そうとして良心を刺せば、死ぬのは自分だった。魂を隠し続けた人間は、その魂と向き合った瞬間に、滅びる。美しい仮面の下に隠していた本当の自分こそが、彼の真の姿だったのだ。

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原文を無料で読めます。The Picture of Dorian Gray(Project Gutenberg掲載の英語原文)