『モンテ・クリスト伯』挿絵(1888年版)画: 『モンテ・クリスト伯』挿絵(1888年版)

モンテ・クリスト伯

アレクサンドル・デュマ(1802-1870)。フランスの大作家。『三銃士』と並ぶ代表作である本作は、波瀾万丈の復讐譚として、世界で最も愛される冒険小説の一つ。

一言での本質

前途有望な若き船乗りエドモン・ダンテスは、結婚式の日、無実の罪を着せられ、絶海の孤島の牢獄に投獄される。彼を陥れたのは、その地位や恋人を妬む者たちだった。十四年の獄中で、彼は老司祭から知識と、莫大な財宝の在処を授かる。脱獄し、財宝を手にした彼は、『モンテ・クリスト伯』と名を変え、自分を破滅させた者たちへの、緻密な復讐を開始する。だが、復讐を遂げた果てに彼が見出したのは——。壮大な復讐の物語を通して、正義と復讐、そして赦しの意味を問う、不朽の大ロマンである。

この作品の背景

「モンテ・クリスト伯」は1844〜46年に連載された、アレクサンドル・デュマの代表作だ。舞台は、ナポレオン失脚前後の、激動のフランス。主人公エドモン・ダンテスは、若く、有能で、誠実な船乗りだ。彼は、まもなく船長に昇進し、美しい恋人メルセデスと結婚しようとしている。すべてが順調に見えた。

だが、彼の幸福を妬む者たちがいた。船長の座を狙う同僚、メルセデスに横恋慕する男、そして保身をはかる野心的な検事。彼らの陰謀により、ダンテスは、ありもしない政治犯の罪を着せられ、シャトー・ディフという絶海の孤島の牢獄に、投獄されてしまう。なぜ自分がここにいるのかもわからぬまま、彼は十四年を、暗い独房で過ごす。その絶望の中で、隣の独房を掘り進んできた老司祭ファリアと出会い、彼から、あらゆる学問と、モンテ・クリスト島に眠る莫大な財宝の秘密を授けられる。

物語の構造

  1. 幸福の絶頂若き船乗りダンテスは、船長昇進と結婚を目前に、人生の絶頂にあった。
  2. 陰謀と投獄彼を妬む者たちの陰謀で無実の罪を着せられ、絶海の孤島の牢獄に投獄される。
  3. 獄中の師十四年の獄中で、老司祭ファリアから学問と、莫大な財宝の在処を授かる。
  4. 脱獄と変身脱獄して財宝を手にしたダンテスは、『モンテ・クリスト伯』として社交界に現れる。
  5. 復讐とその果て彼を陥れた者たちへ緻密な復讐を遂げるが、その果てに復讐の虚しさと赦しを知る。

現代の働く人への示唆 解釈

この物語の前半は、人間が、いかに理不尽に幸福を奪われうるかを描く。【解釈】ダンテスには、何の落ち度もなかった。彼は、有能で、誠実で、人に好かれていた。だが、まさにその幸福と有能さが、他人の妬みを買った。妬み、横恋慕、保身——こうした、ありふれた人間の悪意が、結びついて、一人の無垢な青年の人生を、完全に破壊する。ダンテスの転落は、悪が、特別な怪物によってではなく、ごく普通の人間たちの、小さな邪心の集積によって生まれることを示している。

復讐者となったダンテスは、自らを『神の代理人』とみなす。【解釈】莫大な富と知識を得て『モンテ・クリスト伯』となった彼は、自分を陥れた者たちに、緻密な復讐を仕掛ける。彼は、単に相手を殺すのではなく、相手が築いた地位や家庭を、その者自身の罪によって、内側から崩壊させていく。彼は、自分の復讐を、私的な恨みではなく、天に代わって悪を裁く、神の正義の執行だと信じている。だが物語は、その『神を演じる』ことの傲慢さと危うさをも、しだいに浮かび上がらせていく。

復讐を遂げた果てに、ダンテスは『復讐の虚しさ』と『赦し』に行き着く。【解釈】復讐は、無関係な人々をも巻き込み、罪なき者をも傷つけてしまう。完璧なはずだった復讐の中で、ダンテスは、自分が神ではなく、ただの人間であることを思い知る。すべてを成し遂げた後に残るのは、勝利の喜びではなく、深い空虚だ。失われた十四年も、奪われた青春も、復讐では取り戻せない。物語は最後に、復讐よりも、赦しと、未来への希望にこそ、人間の救いがあることを、静かに示唆して終わる。

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原文を読むには

原文を無料で読めます。The Count of Monte Cristo(Project Gutenberg掲載の英語訳)