モンテ・クリスト伯の時代背景
1844年連載開始、舞台はナポレオン失脚前後の激動のフランス。新聞連載小説として熱狂的に読まれたこの大作が、なぜ世界中で愛され続けるのか。時代と作者から読み解く。
舞台はナポレオン失脚前後の激動のフランス
物語は、1815年前後、ナポレオンが失脚し、王政が復古する、政治的に不安定な時代のフランスを舞台にしている。【解釈】ダンテスが無実の罪を着せられるのも、この政治状況と深く関わっている。彼は、ナポレオン派と通じた政治犯という、ありもしない疑いをかけられる。当時のフランスは、ナポレオンを支持する勢力と、王政を支持する勢力が対立し、政治的な立場が、人の運命を簡単に左右した。野心的な検事が、自分の保身のためにダンテスを犠牲にするのも、この時代の政治の生々しさを反映している。激動の時代の権力闘争が、一人の無垢な青年を飲み込んでいく——その背景には、デュマが生きた、革命と動乱を繰り返したフランスの、リアルな歴史がある。
新聞連載小説として熱狂的に読まれた
「モンテ・クリスト伯」は、当初、新聞に連載される形で発表された。毎日、あるいは定期的に、続きが新聞に載る。読者は、次の展開を心待ちにしながら、毎回むさぼるように読んだ。【解釈】この『連載小説』という形式が、物語の作りに、大きく影響している。読者を毎回引きつけ、次を読まずにいられなくさせるために、物語は、息もつかせぬ展開、劇的などんでん返し、強烈な見せ場の連続で構成されている。投獄、獄中の出会い、脱獄、財宝の発見、変身、そして次々と仕掛けられる復讐——どこを取っても、ハラハラさせ、わくわくさせる。デュマは、大衆をとことん楽しませる、物語の天才だった。この、読者を熱狂させる圧倒的な面白さこそ、「モンテ・クリスト伯」が、刊行当時から大ベストセラーとなり、今日まで読み継がれてきた、最大の理由である。
発見: 「復讐」という永遠のテーマの決定版
「モンテ・クリスト伯」が、時代と国境を超えて愛され続けているのは、それが、『復讐』という、人間にとって永遠のテーマを、これ以上ないほど壮大かつ完璧に描ききった、決定版だからだ。【解釈】理不尽に幸福を奪われた者が、力を得て、自分を陥れた者たちに報復する——この復讐の願望は、誰の心の奥にもある、根源的なものだ。不当な目にあったとき、人は『いつか見返してやりたい』と願う。ダンテスの復讐は、その願望を、最も鮮やかな形で、代わりに叶えてくれる。読者は、ダンテスに自分を重ね、彼の復讐の成功に、深い満足を覚える。だが、この物語の偉大さは、復讐の快感を描くだけで終わらないことにある。痛快な復讐の果てに、その虚しさと、赦しの尊さまでを描くことで、物語は、単なる娯楽を超えた、深い人生の真実へと届く。復讐に酔いながら、最後には復讐を乗り越える——この二重の構造ゆえに、「モンテ・クリスト伯」は、何世代もの読者を魅了し続ける、不朽の大ロマンであり続けているのである。
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原文を無料で読めます。The Count of Monte Cristo(Project Gutenberg掲載の英語訳)。