なぜ「求めたものは最初から自分の中にあった」のか

オズの魔法使い(ライマン・フランク・ボーム)の深掘り

知恵を求めるかかし、心を求める木こり、勇気を求めるライオン。彼らが旅の果てに気づく真実は、この物語の中心だ。自己発見というテーマを読み解く。

発見1: 三人は「ないと思ったもの」をすでに持っていた

ドロシーの三人の仲間は、それぞれ、自分に欠けているものを求めて旅をする。かかしは『脳(知恵)がない』と思い込み、ブリキの木こりは『心(優しさ)がない』と嘆き、ライオンは『勇気がない』と恥じている。【解釈】だが、旅の道中を見れば、その思い込みが間違っていることは明らかだ。かかしは、難所に出くわすたびに、知恵を働かせて、巧みな解決策を考え出す。ブリキの木こりは、小さな虫を踏まないよう気遣い、仲間の危機に涙を流すほど、優しい心を持っている。臆病なライオンは、仲間が危険にさらされると、震えながらも、誰よりも勇敢に立ち向かう。彼らは、自分に欠けていると信じていたものを、実は、行動の中で、ずっと発揮していた。ないものねだりをしていた当人たちだけが、それに気づいていなかったのだ。

発見2: 「自分にはない」という思い込みが目を曇らせる

では、なぜ彼らは、自分がすでに持っているものに、気づけなかったのか。それは、『自分にはそれがない』という思い込みが、自分自身を正しく見る目を、曇らせていたからだ。【解釈】かかしは、藁(わら)でできた頭には脳があるはずがない、と思い込んでいる。だから、自分がどれほど賢く振る舞っても、それを『知恵』だとは認められない。私たちも、しばしば同じことをする。『自分は頭が悪い』『自分は優しくない』『自分には勇気がない』——そう思い込んでいると、自分が実際に発揮している能力や美点が、目に入らなくなる。思い込みという色眼鏡が、ありのままの自分を見えなくさせる。彼らに必要だったのは、新しい能力を手に入れることではなく、自分自身を見る目を変えること、自分がすでに持っているものに気づくことだった。

発見3: 「気づき」を与えるのが本当の助けである

物語の終わり、オズは、かかしに脳の代わりにもみ殻を、木こりに心の代わりに絹の心臓を、ライオンに勇気の代わりに飲み物を与える。これらは、魔法でも何でもない、ただの小道具だ。だが、それを受け取った三人は、満足し、自信を持つ。【解釈】ここに、深い洞察がある。オズが与えたのは、能力そのものではない。彼が与えたのは、『お前にはもうそれが備わっている』という、気づきと、お墨付きだった。三人は、もともと知恵も心も勇気も持っていた。足りなかったのは、それを自分が持っていると信じる、自信だけだった。本当の助けとは、相手に欠けたものを外から与えることではなく、相手がすでに持っているものに、気づかせてあげることなのだ。この物語は、人を励まし、成長させるとは何かを、優しく教えてくれる。誰かの価値は、外から付け足すものではなく、すでにその人の中にある。それに光を当てること——それが、本当の意味で人を助けるということなのである。

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