イリアスは何を描いた物語なのか

イリアス(ホメロス)の深掘り

「トロイア戦争を描いた英雄譚」という理解は、半分しか正しくない。冒頭の一行が、この壮大な叙事詩の本当の主題をはっきりと宣言している。それは戦争ではない。

発見1: 描かれるのは十年戦争ではなく「数十日間の怒り」である

「イリアス」はトロイア戦争を扱うが、十年の戦争全体を描くわけではない。木馬の計略もトロイアの陥落も、この作品には登場しない。実際に描かれるのは、戦争の最終盤の、わずか数十日間の出来事だけだ。【解釈】そして、その数十日を貫くのは、戦争の戦略でも国家の興亡でもなく、一人の英雄アキレウスの「怒り」の経過だ。彼が誇りを傷つけられて怒り、戦線を離脱し、親友を失ってさらに激しく怒り、最後にその怒りを手放すまで。冒頭の一行「歌え、女神よ、アキレウスの怒りを」が、すべてを言い表している。これは戦争の物語の顔をした、一つの感情の発生から消滅までの物語なのだ。

発見2: 西洋文学は、最初の一作から「人間の内面」を主題にしていた

三千年近く前の、文字文化の入り口に立つこの作品が、すでに「外の事件」ではなく「内の感情」を中心に据えていることは驚くべきことだ。【解釈】壮大な戦争という巨大な外的事件を背景にしながら、ホメロスがレンズを向けたのは、その中で揺れ動く一人の人間の心だった。怒りはどう生まれるか、人を何から退かせ、何へ駆り立てるか、そしてどう収まるか。これは、近代小説が「個人の内面の探求」を主題にするより、はるか以前のことだ。西洋文学は、その最も古い源流において、すでに人間の心を見つめることから始まっていた。だから三千年後の私たちも、アキレウスの怒りに、自分の怒りを重ねて読むことができる。

発見3: 神々が介入しても、苦しむのは人間だけである

「イリアス」では、オリンポスの神々が絶えず戦争に介入する。ある神はギリシャ方に、ある神はトロイア方につき、人間の運命を操る。【解釈】だが奇妙なことに、神々の介入は、人間の苦しみを軽くはしない。むしろ神々は、自分たちの気まぐれや争いのために人間を駒として使う。死ぬのも、嘆くのも、愛する者を失うのも、つねに人間だけだ。神々は不死だから、本当には何も失わない。この対比が、人間の生の重さを際立たせる。神々の戯れの背景の中で、限りある命を生き、必ず死ぬ運命を背負った人間たちが、それでも誇りのために戦い、友のために泣く。死すべき存在であることの悲しみと尊さ——それこそが、神々の不死との対比の中で浮かび上がる、この叙事詩の深い主題である。

あわせて読む

原文を読むには

原文を無料で読めます。The Iliad(Project Gutenberg掲載の英訳)