宝島の時代背景
1883年刊行。スティーヴンソンが描いた海賊たちは、実在した「海賊の黄金時代」を下敷きにしている。なぜこの一冊が、後のすべての冒険物語の原型になったのか。時代と影響から読み解く。
下敷きは18世紀の「海賊の黄金時代」
物語に登場するフリント船長やシルバーたちは、18世紀初頭、カリブ海や大西洋を荒らし回った、実在の海賊たちのイメージを下敷きにしている。【解釈】キャプテン・キッドやブラックベアードといった、伝説的な海賊が実際に活躍した時代——いわゆる『海賊の黄金時代』が、この物語の歴史的な背景だ。スティーヴンソンは、それらの断片的な伝説や逸話を、巧みに一つの物語へと織り上げた。隠された財宝、宝の地図に記された×印、『黒い斑点(ブラック・スポット)』による海賊たちの掟、オウムを肩に乗せた船乗り——こうした、私たちが『海賊』と聞いて思い浮かべるイメージの多くは、史実そのものというより、スティーヴンソンがこの作品で作り上げ、定着させたものなのだ。
もとは「少年のために描いた一枚の地図」から生まれた
この物語は、もともと、スティーヴンソンが、義理の息子である少年を楽しませるために、遊びで描いた一枚の架空の島の地図から生まれた、と伝えられる。【解釈】一枚の想像上の地図に、彼は名前をつけ、入り江を描き、宝の隠し場所に×印を打った。すると、その地図の上に、海賊たちの物語が、ひとりでに動き出した。つまり「宝島」は、難しい思想や教訓を伝えるために書かれたのではなく、純粋に、少年をわくわくさせるために書かれた。だからこそ、物語は、説教くささがなく、最初から最後まで、冒険の興奮に満ちている。子どもを楽しませたいという、まっすぐな動機から生まれたことが、かえって、この物語を、時代も国境も超えて愛される、普遍的な冒険譚にしたのである。
発見: 「宝島」が、後のすべての冒険物語の原型になった
「宝島」が文学史で特別な位置を占めるのは、それが、後の無数の冒険物語の、原型(プロトタイプ)を作り上げたからだ。【解釈】宝の地図を手に入れ、財宝を求めて旅に出る。仲間の中に裏切り者が潜んでいる。魅力的だが信用できない悪党と、知恵比べをする。少年が冒険を通じて成長する。これらの『型』は、その後、数えきれないほどの冒険小説、映画、漫画、ゲームに、繰り返し受け継がれていった。私たちが、海賊や宝探しの物語を見て、なんとなく『お決まりの展開』だと感じるとき、その『お決まり』の多くは、もとをたどれば、この一冊にたどり着く。スティーヴンソンは、後世のクリエイターたちが何度も汲み上げることになる、冒険物語の源泉を掘り当てた。一人の少年を楽しませようと描いた一枚の地図が、世界中の人々の冒険への憧れを形づくる、文学の宝の地図になったのである。
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原文を無料で読めます。Treasure Island(Project Gutenberg掲載の英語原文)。