定義

忘却は初日に崖のように進む。だから復習は、翌日に置く。

一晩で20個の単語が7個に減るのは、記憶力の欠陥ではなく、全人類共通の仕様です。百年以上前、ドイツの心理学者が自分自身を実験台にこの速さを計測し、忘却は一定の速さではなく「前半急落・後半なだらか」の形で進むことを明らかにしました。記憶は倉庫の荷物ではなく、波に洗われる砂浜の足あとに近いのです。

脳は、繰り返し使われる情報だけを常連として残し、一度きりの情報は掃除します。だから復習とは、忘れた分を埋める補修ではなく、「この情報は常連だ」という脳への申告です。いちばん効くのは忘れかけた頃で、少し苦労しながら思い出す作業そのものが、消えかけた記憶を強く彫り直します。楽な読み返しは、効かない復習です。

復習は翌日、3日後、1週間後、1か月後と、階段のように間隔を広げて置きます。復習のたびに曲線そのものが緩くなるからです。読み返すより、見ないで思い出す形が効きます。まとめて頑張る一夜漬けより、分けて置く小さな復習。記憶の勝負は時間の量ではなく、置き場所で決まります。

この概念の論点

14節
  1. 覚えたそばから忘れるのは、異常なのか
  2. 忘れる速さを、測った人がいた
  3. 最初の24時間が、勝負である
  4. 忘れることは、脳の故障ではなく機能である
  5. 復習は、「忘れかけた頃」が一番効く
  6. 間隔は、階段のように広げていく
  7. 箱の仕組みで、管理を自動にする
  8. 一夜漬けは、なぜ翌日消えるのか
  9. 大人の毎日にも、曲線は効く
  10. 子どもの勉強を、曲線で設計し直す
  11. ぜんぶ覚えようと、しなくていい
  12. 忘却曲線の、よくある間違い
  13. 明日、やる三つのこと
  14. まるごと実践——英語をやり直す、ある会社員の三週間