デュマのモンテ・クリスト伯の発想
デュマの着想源
アレクサンドル・デュマは、1838年に出版されたジャック・プシュの回想録「警察の記録から」から「モンテ・クリスト伯」の着想を得ました。 この回想録には、靴職人のピエール・ピコーという人物の物語が記録されています。ピコーは、裕福な女性と結婚する予定でしたが、ライバルの4人に密告され、オーストリア軍のスパイ容疑で7年間投獄されてしまいました。 投獄中、ピコーは同房の老囚人から教育を受け、莫大な財産を相続することになります。釈放後、ピコーは身分を隠し、10年の歳月をかけて自分を陥れた者たちに復讐を果たしました。
デュマの改変
デュマはこの実話に魅了され、小説の題材とすることを決意しました。しかし、彼はそのまま物語を転用するのではなく、独自の要素を加えてより劇的で感動的な物語に作り替えました。 デュマは、ピコーの物語をベースに、舞台を19世紀初頭のフランスに移し、主人公を魅力的な若者エドモン・ダンテスに設定しました。また、ダンテスの投獄理由をナポレオン支持の冤罪に変更し、復讐の過程で出会う人物や恋愛模様などを加えることで、より複雑で深みのある人間ドラマを描き出しました。
その他の影響
「モンテ・クリスト伯」は、プシュの回想録以外にも、当時の社会情勢や文学作品の影響を受けています。復讐劇というテーマは、フランス革命後の社会不安や、ナポレオン戦争後の混乱を反映していると言えます。また、バイロンの詩や、シェイクスピアの戯曲など、ロマン主義文学の影響も指摘されています。