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ミルトンの失楽園の対称性

## ミルトンの失楽園の対称性

構造における対称性

『失楽園』は12巻からなる長編叙事詩であり、その構成には明らかな対称性が見られます。

* **天地創造と堕落の対比:** 作品の前半では、1巻と2巻で天国の描写とサタンの反乱が、3巻と4巻で人間の創造と楽園での生活が描かれます。これは、後半の9巻から12巻で描かれる、アダムとイブの堕落、楽園からの追放、そして人類の未来への希望という流れと対照的です。
* **サタンとキリストの対比:** サタンの地獄からの旅と誘惑が作品の核を成していますが、これは同時に、キリストの受肉と救済という対比構造を浮かび上がらせます。サタンが偽りの父として描かれる一方で、キリストは真の救済者として提示されます。

文体における対称性

ミルトンは、作品全体を通して対称的な文体を駆使しています。

* **対句法の多用:** ミルトンは、対照的な言葉を並べて対比を強調する修辞技法である対句法を頻繁に使用します。例えば、「Better to reign in Hell, than serve in Heav’n」(地獄で君臨するほうが、天国で仕えるよりもよい)というサタンの有名な言葉は、対句法によって彼の反逆精神を際立たせています。
* **ラテン語的な語順:** ミルトンは、古典的なラテン語の影響を受けた語順を採用しており、これもまた作品に対称性をもたらしています。主語-動詞-目的語という通常の英語の語順ではなく、動詞を文末に置くなど、より複雑で詩的な語順を用いることで、文体にリズムとバランスを生み出しています。

主題における対称性

『失楽園』は、善と悪、服従と反抗、自由意志と神の摂理といった、対照的な主題を探求しています。

* **善と悪の対比:** 作品全体を通して、サタンの悪意と神の慈悲、アダムとイブの罪とキリストの贖罪など、善と悪の対立が描かれています。この対比は、人間の内的葛藤や、善悪の境界線の曖昧さを浮き彫りにします。
* **自由意志と神の摂理の対比:** アダムとイブは、神の意志に背いて禁断の果実を食べますが、これは同時に、彼ら自身の自由意志による選択でもあります。ミルトンは、人間の自由意志と神の全知全能という一見矛盾する概念を対比させることで、人間の責任と運命について考察しています。

これらの対称性は、『失楽園』を多層的な作品に昇華させ、読者に様々な解釈の可能性を提供しています。作品全体に散りばめられた対称性は、単なる装飾ではなく、主題を強調し、複雑な思想を表現するための重要な役割を担っています。

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