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キケロの『共和国について』の思想的背景

## キケロの『共和国について』の思想的背景

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古代ギリシア哲学の影響

キケロの政治思想、特に『共和国について』に色濃く反映されているのが、古代ギリシア、とりわけプラトンの影響です。 キケロはプラトンの著作を深く研究し、『国家』をはじめとする著作から多くの概念や議論を吸収しました。

例えば、『共和国』で展開される理想国家の概念は、プラトンの『国家』における哲人王による統治の概念と深く結びついています。 キケロはプラトンが理想とした哲人王と同様、知性と徳を兼ね備えた人物こそが国家を統治するのにふさわしいと考えていました。
また、正義や法の支配といった概念も、プラトン哲学から大きな影響を受けています。 キケロにとって正義は単なる法の遵守ではなく、普遍的な道徳原理に基づくものであり、法はあくまでその具現化に過ぎないと考えました。

しかし、キケロはプラトンの思想をそのまま受け入れたわけではありません。 プラトンの理想主義的な国家論に対して、キケロはより現実的な視点を持ち合わせていました。 彼は、現実の政治においては、多様な意見や利害を調整し、妥協点を見出すことが重要であることを認識していました。

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ローマの伝統と政治体制の重要性

キケロはギリシア哲学から大きな影響を受けながらも、ローマの伝統や歴史、そして共和政という政治体制にも深い敬意を払っていました。 彼は、ローマが古代ギリシアとは異なる独自の道徳観や政治文化を築き上げてきたことを高く評価し、それらを継承することの重要性を訴えました。

特に、キケロはローマ共和政の伝統である「モレス・マヨールム」(先祖の道徳)を重視しました。 彼は、共和政の繁栄は、先祖代々受け継がれてきた勤勉さ、質実剛健さ、公共心といった伝統的な価値観によって支えられてきたと考えていました。 しかし、キケロの時代には、これらの伝統的な価値観が衰退しつつあり、共和政は危機に瀕していました。 キケロはこうした状況を憂い、伝統的な価値観の復興を訴え、共和政の再建を目指しました。

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