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シェーラーの宇宙における人間の位置の思考の枠組み

## シェーラーの宇宙における人間の位置の思考の枠組み

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生命衝動と精神

シェーラーは、生命現象を単なる物理化学的な現象に還元することに反対し、生命現象一般を貫く根源的な原理として「生命衝動(Drang)」という概念を導入しました。生命衝動は、生物をして、常に環境に働きかけ、自己を維持・発展させようとする内的駆動力です。シェーラーは、植物、動物、人間といった生命の段階に応じて、この生命衝動は異なる形で現れると考えました。

植物においては、生命衝動は、栄養摂取や成長といった、自己保存のための盲目的な力として働いています。一方、動物においては、生命衝動は、外界を意識し、その中で能動的に運動することを可能にする「衝動」として現れます。動物は、感覚器官を通して外界を知覚し、その知覚に基づいて行動します。

人間において、生命衝動は、世界を客観的に認識し、自己を世界から分離して意識することを可能にする「精神」を生み出します。精神は、動物的な衝動を超越し、理性や道徳、文化といった人間特有の能力の源泉となります。

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世界開闢の三層構造

シェーラーは、生命衝動の展開として、世界が「環境世界」「環世界」「開かれた世界」という三層構造をとって現れると考えました。

まず、「環境世界(Umwelt)」は、植物や無機物を含めた、生命にとって意味を持たない物理化学的な世界です。

次に、「環世界(Umwelt)」は、動物がそれぞれの感覚器官を通して知覚し、意味を与えられた世界です。例えば、ダニにとっての世界は、温度と酪酸の刺激という限られた要素で構成されており、犬にとっての世界は、人間の視覚では捉えきれない匂いの世界が広がっています。

最後に、「開かれた世界(Weltoffenheit)」は、人間だけがアクセスできる世界です。人間は、精神によって、単なる感覚的な知覚を超え、物事の本質を理性的に認識することができます。また、時間や空間を超越した普遍的な価値や理想を理解することもできます。

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人間の位置

シェーラーは、人間を「宇宙における位置」という観点から捉え直そうとしました。彼は、生命衝動の進化という視点から、植物、動物、人間の連続性を認めつつも、人間は精神を持つがゆえに、他の生物とは根本的に異なる存在であると主張しました。

人間は、精神によって世界を客観的に認識し、自己を世界から分離して意識することができます。この自己意識の獲得によって、人間は、自らの存在の意味や目的を問い、自由な意思決定に基づいて行動することが可能になりました。

シェーラーは、人間のこの特殊な立場を「世界開放性」という言葉で表現しました。人間は、世界に対して開かれた存在であり、常に新しい価値や意味を創造することができます。そして、その創造活動を通して、世界と自己をより高次なものへと発展させていくことができる存在なのです。

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