ホメロスのイリアスの原点
叙事詩の成立
「イリアス」は紀元前8世紀頃に古代ギリシャで成立したと考えられています。作者はホメロスとされていますが、彼の実在や作者としての役割については議論が続いており、断定はされていません。
口承伝統
「イリアス」は文字の発明以前から口承によって伝えられてきた物語が元になっています。吟遊詩人たちは音楽に合わせて物語を語り継ぎ、その過程で物語は変化や肉付けがなされていったと考えられています。そのため、「イリアス」は単一の作者による作品ではなく、長い年月をかけて形成された集合的な創作物と捉えることができます。
史実と神話
「イリアス」の舞台となるトロイア戦争は、紀元前13世紀頃に実際に起こったとされる戦争です。しかし、「イリアス」で描かれる内容は史実とは異なり、神々や英雄たちの活躍、超自然的な出来事が多く登場します。これは、当時のギリシャ人が歴史を神話や伝説と織り交ぜて理解していたことを示しています。
ミケーネ文明
「イリアス」で描かれる社会や風習は、紀元前16世紀から紀元前12世紀にかけて栄えたミケーネ文明を反映していると考えられています。ミケーネ文明は、ギリシャ本土を中心に栄えた青銅器文明で、王や貴族を中心とした社会構造を持っていました。「イリアス」に登場する英雄たちの宮殿や武具、葬儀の描写などからは、ミケーネ文明の影響を窺い知ることができます。