プルードンの経済的諸矛盾の体系の批評
マルクスの批判
カール・マルクスは、1847年に出版した『哲学の貧困』の中で、ピエール・ジョセフ・プルードンの『経済的諸矛盾の体系、または貧困の哲学』を痛烈に批判しました。マルクスはこの著作を、プルードンの経済理論における矛盾を鋭く突くことで、彼自身の弁証法的唯物論の優位性を示そうとしました。
プルードンの方法論への批判
マルクスはまず、プルードンの方法論を批判しました。プルードンは、経済現象を、その歴史的・社会的文脈から切り離して、抽象的な「カテゴリー」として捉えようとしたとマルクスは主張します。例えば、プルードンは「所有」という概念を、それが具体的な歴史的条件の中でどのように発生し、変化してきたかを考慮することなく、抽象的に論じたとマルクスは批判しました。マルクスは、このような抽象的な分析は、現実の経済の複雑さを捉えきれていないと主張しました。
プルードンの経済理論への批判
マルクスはまた、プルードンの具体的な経済理論も批判しました。例えば、プルードンは、労働価値説を採用しながらも、同時に、市場における自由競争を擁護しました。マルクスは、この二つの立場は根本的に矛盾していると主張しました。労働価値説によれば、商品の価値は、それを生産するために投下された労働量によって決まります。しかし、自由競争の下では、価格は、需要と供給の関係によって決定されます。マルクスは、プルードンが、これらの矛盾する立場を、弁証法的に止揚するのではなく、単に並置しているに過ぎないと批判しました。
プルードンの政治的な立場への批判
さらに、マルクスは、プルードンの政治的な立場も批判しました。プルードンは、社会主義者を自称していましたが、マルクスは、プルードンの社会主義は、小ブルジョワジーの立場を反映した、空想的で非現実的なものであると断じました。マルクスは、真の社会主義は、プロレタリアートの階級闘争を通じてのみ実現されると主張しました。
マルクスの批判の影響
マルクスの『哲学の貧困』は、プルードンの思想に決定的な打撃を与え、その後、プルードンは、マルクス主義者から、小ブルジョワジーの空想家として、嘲笑の対象とされるようになりました。しかし、プルードンの思想は、その後も、アナーキズムや協同組合運動など、様々な社会運動に影響を与え続けました。