## 川端康成の雪国が扱う社会問題
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女性の社会的地位の低さ
「雪国」の舞台となる温泉街では、芸者や酌婦といった、男性に仕えることで生計を立てる女性たちが多く描かれています。彼女たちは男性に経済的に依存せざるを得ない状況にあり、自らの意思で人生を選択することが難しい立場に置かれています。駒子は、芸者として働きながらも、島村との純粋な愛に生きる意味を見出そうとしますが、その願いは叶わず、社会の偏見や自身の境遇に苦悩します。
葉子もまた、病弱の男のために身を粉にして働き、自分の幸せを後回しにするしかありません。彼女たちの姿は、当時の日本で女性が置かれていた弱い立場を象徴しています。
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地方の貧困と都市との格差
雪深い温泉街は、閉鎖的な空間であると同時に、経済的にも都市部に比べて遅れている様子が描かれています。駒子は、都会から来た島村に対し、都会への憧れを口にする場面もあります。都会で暮らす島村と、地方で生きる駒子や葉子の間には、経済的な豊かさだけでなく、人生の選択肢や価値観にも大きな隔たりが存在しています。
「雪国」は、美しい自然描写の裏側にある、地方の貧困や都市との経済格差という社会問題を浮き彫りにしています。
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人間の孤独と虚無感
「雪国」の登場人物たちは、それぞれに孤独を抱え、生きる意味を見失っているように描かれています。島村は、都会での生活に虚しさを感じ、雪国に癒しを求めますが、真の幸福を見つけることはできません。
駒子もまた、島村への愛に救いを求めながらも、その関係の儚さに苦悩します。葉子の献身的な姿も、どこか空虚な印象を与えます。「雪国」は、近代化が進む中で、人々が抱える孤独感や虚無感を、美しい風景とは対照的に描き出しています。