太宰治の人間失格を読んだ後に読むべき本
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フランツ・カフカ「変身」
太宰治の「人間失格」は、自己嫌悪と疎外感に苦しむ葉蔵という青年の、人間社会への絶望と破滅を描いた作品です。読後には、人間の存在意義や社会との関わり方について、深く考えさせられると同時に、どこかやりきれない虚しさや哀愁を感じることでしょう。
「変身」は、ある朝目覚めると巨大な虫に変身していた Gregor Samsa を主人公とした物語です。彼もまた、葉蔵と同じく社会から疎外され、孤独と絶望に直面します。作品は、不条理な状況に置かれた人間の苦悩を描写することで、読者に存在の不安や社会の冷酷さを突きつけます。
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共通するテーマ:疎外と孤独
両作品は、社会に馴染めず、自分の居場所を見つけられない主人公の姿を通して、人間の根源的な孤独と疎外感を描き出しています。葉蔵は自らを「人間失格」と規定し、人間社会から自ら距離を置くことで、孤独を深化させていきます。一方、Gregor は虫に変身したことで、家族や社会から拒絶され、言葉すら通じない孤独な存在へと変貌を遂げます。
異なる状況設定ながらも、両作品が描き出す疎外と孤独は、現代社会においても共感を呼ぶテーマと言えるでしょう。人間関係の希薄化や競争社会の激化など、現代社会は、人々を孤独に追いやる様々な要因を抱えています。
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対比的な作風:私小説と不条理文学
「人間失格」は、太宰自身の体験を色濃く反映したとされる私小説であり、葉蔵の心情は、太宰自身の苦悩と重なる部分が多く見られます。一方、「変身」は、不条理文学の傑作とされ、現実ではあり得ない設定や展開を通して、人間の存在の不確かさを浮き彫りにします。
対照的な作風でありながら、両作品は人間の心の奥底にある不安や恐怖を描き出す点で共通しています。読者は、葉蔵の苦悩に共感すると同時に、Gregor の不条理な状況に、自分自身の存在の脆さを見出すことになるでしょう。