夏目漱石の坊ちゃんに関連する歴史上の事件
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日清戦争(1894年 – 1895年)
『坊ちゃん』の作中では、主人公の教師としての赴任先である四国の中学校で、日清戦争の凱旋兵歓迎会が開かれる場面が描かれています。坊ちゃんが赴任したのは明治33年(1900年)ですが、日清戦争はそれからわずか5年前に終結したばかりであり、当時の日本社会にはまだその熱気が色濃く残っていました。
作中では、この凱旋兵歓迎会において、軍隊経験のある数学教師のヤマアラシこと山嵐が、軍人としての武勇伝を熱弁する一方、坊ちゃんは軍隊経験がないことを揶揄され、肩身の狭い思いをします。この対比は、当時の日本社会における軍隊経験の有無が、個人の社会的評価に大きな影響を与えていたことを示唆しています。
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日露戦争(1904年 – 1905年)
『坊ちゃん』の発表は明治39年(1906年)であり、これは日露戦争終結の翌年にあたります。作中では日露戦争に関する直接的な記述はありませんが、当時の日本は国家総動員体制の下、国民の間には好戦的なムードが高まっていました。
このような時代背景を踏まえると、『坊ちゃん』における主人公の正義感や行動力は、当時の閉塞的な社会状況に対する一種のアンチテーゼとして捉えることもできます。つまり、権力や不正に屈せず、自らの信念に基づいて行動する坊ちゃんの姿は、戦争によって疲弊した人々の心に、一種の爽快感や希望を与えたのではないでしょうか。
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日露戦争後の社会状況
日露戦争後の日本は、戦勝国としての国際的地位を高める一方で、国内では戦費支出による経済の疲弊や、社会不安の増大といった問題を抱えていました。
『坊ちゃん』の舞台となる地方都市においても、このような時代状況を反映して、汚職や不正が横行し、人々の間には閉塞感が漂っていました。主人公の坊ちゃんは、東京から来た新任教師として、この地方都市の古い体質や不正に真っ向から対立することになります。