## 三島由紀夫の金閣寺の普遍性
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美と醜悪、現実と理想の対立
「金閣寺」は、美の象徴である金閣と、吃音や容姿にコンプレックスを抱く「私」こと溝口との対比構造を通して、普遍的なテーマである美と醜悪、現実と理想の対立を描いています。溝口は金閣の圧倒的な美しさに憧憬を抱く一方で、自身の内面に抱える醜悪さ、現実の生への劣等感に苦悩します。この対比は、誰しもが抱える自己肯定感の低さ、理想と現実のギャップといった普遍的な苦悩を想起させます。
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戦後の不安と虚無感
戦後間もない時代設定の中、金閣は戦火を免れた過去の象徴として描かれています。溝口は、変わらぬ美しさを保つ金閣と、焼け野原と化した現実社会との落差に、戦後の不安と虚無感を抱きます。これは、戦争の傷跡が生々しい時代に多くの人が抱えていたであろう、価値観の崩壊や喪失感を反映しています。
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人間のエゴイズムと破壊衝動
溝口は、金閣の美しさに執着するあまり、それを独占したい、あるいは破壊したいという倒錯した感情を抱くようになります。この所有欲と破壊衝動は、人間のエゴイズムや、美に対する歪んだ執着心の表れとして描かれています。
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自己存在の証明
溝口にとって金閣を焼失させる行為は、自身の存在を世に知らしめるための、唯一の方法でした。彼は、金閣の美しさによって自身の存在が否定されていると感じ、その破壊を通して自己の存在を証明しようとします。これは、現代社会においても重要なテーマである、自己承認欲求や自己表現の難しさといった普遍的な問題を提起しています。