ヴォルテールの哲学辞典の発想
ヴォルテールによる既存の辞典への不満
ヴォルテールは、当時の主要な辞典であったバイユの「歴史批評辞典」やダランベールの「百科全書」に不満を抱いていました。バイユの辞典は宗教的な偏見に満ちており、ダランベールは哲学的な議論を避けていました。ヴォルテールは、これらの辞典が真実を追求するというよりも、既存の権威やドグマを擁護することに重点を置いていると考えていました。
啓蒙主義の思想を広める手段としての辞典
ヴォルテールは、「哲学辞典」を、啓蒙主義の思想、特に理性、寛容、宗教的偏見への反対といった思想を広めるための手段と見なしていました。彼は、辞典という形式を用いることで、幅広い読者層に自分の考えを伝えることができると考えました。
アルファベット順の項目による批判の提示
「哲学辞典」は、アルファベット順に並べられた短い項目で構成されています。ヴォルテールは、この形式を用いることで、特定のテーマについて集中的に論じるだけでなく、一見無関係に見える事柄の間のつながりを示唆し、読者に独自の思考を促すことを意図していました。また、短い項目は検閲をくぐり抜けやすく、さまざまなトピックに皮肉や風刺を込めて、当時の社会や権力者を批判することができました。
多様なテーマと読者への呼びかけ
「哲学辞典」は、哲学、宗教、歴史、政治、文学など、多岐にわたるテーマを扱っています。ヴォルテールは、これらのテーマについて、専門的な知識を持たない読者にも理解できるよう、明瞭かつ簡潔な文章で解説しました。そして、読者に対して、自分で考え、判断することを促しました。