ヴォルテールの哲学書簡の面白さ
イギリス滞在経験が生む比較文化論
「哲学書簡」は、ヴォルテールがイギリスに滞在した経験(1726-1729年)を踏まえて、フランスの旧体制への批判を織り交ぜながら、イギリスの政治・社会・宗教・文化など幅広い分野を紹介した書簡形式のエッセイ集です。
当時のフランスは、絶対王政とカトリック教会の影響力が強く、言論の自由は制限されていました。一方、イギリスは名誉革命を経て立憲君主制と宗教的寛容が進展しており、フランスと対照的な社会を形成していました。
ヴォルテールは、この両国の違いを鋭く観察し、フランス読者に向けてイギリスの優れた点を具体的に紹介することで、暗にフランス社会の欠陥を浮き彫りにしています。
多様なテーマと軽快な語り口
「哲学書簡」で扱われるテーマは多岐に渡ります。
例えば、政治体制、宗教、科学、文学、哲学、経済など、当時の社会問題や人々の関心を集めたテーマが網羅されています。
各テーマについて、ヴォルテールはイギリスの思想家や文化人を紹介しながら、自身の見解を展開していきます。
特徴的なのは、難解な専門用語を避けた平易な文章とウィットに富んだ語り口です。
難解なテーマであっても、読者が飽きずに読み進められるよう工夫が凝らされており、軽快な語り口の中に、鋭い社会風刺や皮肉が込められていることも少なくありません。
この軽妙洒脱な文体は、当時のフランス社会では非常に斬新であり、多くの読者の心を掴みました。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。