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ヴォルテールのミクロメガスから学ぶ時代性

ヴォルテールのミクロメガスから学ぶ時代性

ミクロメガスにおける啓蒙主義思想

『ミクロメガス』は、フランス啓蒙主義の代表的な思想家ヴォルテールによって1752年に発表された風刺小説です。 巨大な体を持つシリウス星人ミクロメガスと、その友人で土星人のサチュルヌが宇宙を旅し、最終的に地球へとたどり着きます。 そこで彼らは、自分たちからは微小な存在である人間たちを観察し、対話を通して人間の愚かさや矛盾を浮き彫りにしていくという物語です。

この作品には、当時の社会に対するヴォルテールの鋭い批判精神が色濃く反映されており、特に次の3つの啓蒙主義思想を読み解くことができます。

1. 相対主義的な視点

ミクロメガスとサチュルヌという、地球人から見れば途方もなく巨大な存在を主人公に設定することで、人間の小ささ、そして相対的な価値観を浮き彫りにしています。 地球人は自分たちを世界の頂点と捉えがちですが、宇宙全体から見ればちっぽけな存在であり、彼らの価値観も絶対的なものではないことを示唆しています。

例えば、ミクロメガスは地球人にこう問いかけます。「あなた方は自分たちだけが世界に存在すると考えているのですか?あなた方の星だけが、生命と知性を持つ唯一の場所だと?」 この問いかけは、当時のヨーロッパ社会に蔓延していた、人間中心主義や自民族中心主義への痛烈な批判となっています。

2. 理性に対する信頼

ミクロメガスは、理性と科学的思考を重視する存在として描かれています。 彼は地球人に対して、偏見や迷信に囚われず、理性に基づいて世界を理解しようと説きます。 これは、啓蒙主義の根幹をなす「理性による世界の理解」という思想を反映しています。

例えば、ミクロメガスは地球人の戦争や宗教対立を目の当たりにし、その愚かさに嘆きを漏らします。 彼は、理性によって導かれれば、争いごとや不寛容といった問題は解決できるはずだと信じています。

3. 社会的不正義への批判

『ミクロメガス』は、当時の社会における不平等や不正に対する風刺も込められています。 ミクロメガスは、地球上で富と権力が一部の人々に集中し、多くの人々が貧困や抑圧に苦しんでいる現実を目の当たりにします。

彼は、人間社会の矛盾や不条理を鋭く指摘し、真の幸福を実現するためには、社会構造そのものを変革する必要があることを訴えかけています。

このように、『ミクロメガス』は、単なるSF小説ではなく、啓蒙主義思想を背景に、当時の社会や人間の在り方に対して鋭い批判を投げかける作品として読むことができます。

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