ヴォルテールのカンディードとアートとの関係
絵画と彫刻の描写
「カンディード」の中では、絵画や彫刻が具体的な例として挙げられることは多くありません。作中で言及される数少ない例として、エルドラドからヨーロッパへ戻る際にカンディードが同行を依頼した老女が、かつては美しさで有名だった自身の肖像画について語る場面が挙げられます。「私はヴェネツィアで非常に尊敬されていました。崇拝者たちには事欠きませんでした。」老女は語ります。「私は絵にも描かれました。あの頃はまだ若くて美人だったものです。最も有名な画家の一人に、私の肖像画を描いてもらいました。」
この描写は、虚栄心や過ぎ去った栄光といった作品のテーマと関連付けられています。老女の過去の美しさの唯一の証拠は、もはや現実を反映していない絵画だけなのです。
芸術の価値に対する風刺
「カンディード」は、芸術に対する直接的な言及は少ないものの、富裕層や権力者たちの間で蔓延する浅薄さや物質主義を風刺しており、それは当時の芸術に対する見方にも当てはまります。
例えば、カンディードが相続した莫大な財産は、すぐに悪徳なアバドン神父やギュネゴンドの兄といった人物たちによって狙われてしまいます。彼らは芸術を愛する者として描かれているわけではありませんが、彼らの物質主義的な追求は、芸術作品を単なるステータスシンボルとみなす人々の態度を反映していると言えるでしょう。
さらに、「カンディード」は、楽観主義や人間の本性といったテーマを探求しており、これらは芸術にも関連付けることができます。例えば、カンディードの師であるパン gloss は、この世が「あらゆる可能な世界の中で最良のものである」と主張していますが、カンディードは旅の中で、戦争、貧困、人間の残虐行為を目の当たりにします。これらの経験を通して、カンディードはパン gloss の楽観主義に疑問を抱き、世界と人間の本質について、より複雑な見方を身につけていきます。
芸術を通じた社会批判
ヴォルテールは「カンディード」を通して、当時の社会を鋭く風刺しています。芸術は、権力者や富裕層によってしばしば利用され、彼らの権威や富を誇示する手段となっていました。ヴォルテールは、芸術が持つこのような側面を批判的に捉えていた可能性があります。
一方で、ヴォルテール自身も芸術の力を高く評価していました。彼は文学を通して社会的不公正を批判し、啓蒙思想を広めようとしました。
総じて、「カンディード」は芸術作品そのものに対する直接的な言及は多くありませんが、作品全体を通して、当時の芸術に対する見方や社会における芸術の役割について、示唆に富む考察を提供しています。