Skip to content Skip to footer

ヴェサリウスのファブリカの対極

ヴェサリウスのファブリカの対極

ガレノスの影響と中世医学

「ヴェサリウスのファブリカ (De Humani Corporis Fabrica Libri Septem) 」は、1543年に出版されたアンドレアス・ヴェサリウスによる解剖学書であり、古代ギリシャ以来の人体解剖に基づく詳細な観察と図解によって、医学史における金字塔とされています。

ヴェサリウス以前の中世ヨーロッパ医学は、ガレノスの教えに強く影響を受けていました。古代ローマ時代の医師であったガレノスは、人体解剖を含めた医学研究に熱心に取り組み、多くの著作を残しました。しかし、ローマ帝国では人体解剖は制限されていたため、ガレノスは主に動物、特にブタやサルを解剖して、その知見を人間に当てはめていました。

ガレノスの権威は絶対的なものとされ、その教えは中世を通して疑われることはありませんでした。医学教育においても、教授はガレノスのテキストを朗読し、外科医が解剖を行い、学生はその様子を観察するという形式が一般的でした。

ヴェサリウスの革新と限界

ヴェサリウスは、自ら人体解剖を行い、観察結果を詳細な図解と共に記録することで、ガレノス医学の誤りを次々と明らかにしました。彼は、ガレノスの多くの解剖学的記述が人間ではなく動物に基づいていることを指摘し、従来の医学教育を批判しました。

「ファブリカ」は、精密な図版と詳細な説明によって、人体構造に関する革新的な知識を提供し、近代医学の礎となりました。しかし、ヴェサリウスですら、ガレノスの影響を完全に脱却することはできませんでした。彼は、血液循環や神経系の機能など、ガレノスの誤った説のいくつかを鵜呑みにしていました。

ヴェサリウスの「ファブリカ」は、医学史における転換点となりました。しかし、それはガレノス医学の完全な否定ではなく、むしろその延長線上に位置づけられます。ガレノスの影響は、ヴェサリウス以降も長く医学界に残り続けました。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5