ヴィトゲンシュタインの哲学探求の関連著作
フレーゲ『概念記法』
『哲学探求』を理解する上で欠かせないのが、フレーゲの思想、特にその代表作である『概念記法』です。ヴィトゲンシュタインは、若き日にフレーゲの思想に深く影響を受け、論理学や言語哲学を探求するようになりました。『概念記法』で提唱された、論理に基づいた厳密な言語によって思考を表現しようとする試みは、『論理哲学論考』における論理 atomism や picture theory of language にも影響を与えています。
ラッセル『数学の原理』
同じく重要なのが、ラッセルの『数学の原理』です。この著作は、数学を論理学に還元しようと試みたもので、ヴィトゲンシュタインの初期の思想に大きな影響を与えました。特に、複雑な命題をより単純な原子命題に分解していくという論理 atomism の考え方は、『数学の原理』の方法論から大きな影響を受けています。また、『論理哲学論考』における真理関数や truth-table の概念も、ラッセルの論理学の強い影響下で形成されたものです。
ウィリアム・ジェームズ『プラグマティズム』
後期ヴィトゲンシュタイン、特に『哲学探求』における言語ゲームの概念を理解する上で、ジェームズのプラグマティズムは重要な参照点となります。ジェームズは、概念の意味はその使用法に現れると主張し、真理を固定的なものではなく、人間の経験や実践と結びついた動的なものとして捉えました。これは、意味を固定的に捉えようとした『論理哲学論考』の立場からの転換を示すものであり、『哲学探求』における「言葉は道具である」という考え方に繋がっていきます。
後期ヴィトゲンシュタインの著作群
『哲学探求』をより深く理解するためには、『青色本』『茶色本』など、同時期に書かれたヴィトゲンシュタイン自身の著作群も参照する必要があります。これらの著作は、『哲学探求』で展開される言語ゲーム、規則、家族的類似性といった概念をより具体的に解説しており、『哲学探求』を補完する役割を果たします。