## ワルラスの純粋経済学要論の原点
ワルラスの経済学への道程
レオン・ワルラス(Léon Walras, 1834-1910)は、限界革命を代表する経済学者の一人として知られており、その主著『純粋経済学要論』(Éléments d’économie politique pure) は近代経済学の基礎を築いた重要な著作として位置づけられています。
父オーギュスト・ワルラスの影響
ワルラスの経済学研究への道は、父オーギュスト・ワルラスの影響抜きに語ることはできません。オーギュストは経済学者として活動していたわけではありませんでしたが、地代に関する考察から希少性の概念に着目し、それが価値の源泉であると考えるなど、先進的な経済思想を持っていました。
古典派経済学からの影響と批判
ワルラスは、父の影響もあり、若い頃から経済学に関心を持ち、当時の主流であった古典派経済学を学びました。特に、アントワーヌ・オーギュスタン・クールノーの著作から大きな影響を受け、数学を用いた分析手法を習得しました。
しかし、ワルラスは古典派経済学の限界も認識していました。古典派経済学は、部分均衡分析に留まり、経済全体を統一的に捉えることができなかった点、そして、価値の源泉を明確に説明することができなかった点を批判しました。
物理学から経済学への転用
ワルラスは、経済学を「富に関する理論」から「価値の理論」へと転換することを目指し、そのために自然科学、特に物理学の分析手法を経済学に取り入れることを試みました。彼は、経済現象も物理現象と同様に、一定の法則性に基づいて動いていると考え、その法則性を数学を用いて解明しようとしました。
一般均衡理論の着想
ワルラスは、個々の市場における需給均衡だけでなく、全ての財・サービスの市場、そして生産要素の市場を含む経済全体が同時に均衡状態にあることを示す「一般均衡理論」を構築しました。
『純粋経済学要論』における体系化
ワルラスは、『純粋経済学要論』において、それまでの自身の研究成果を体系化し、一般均衡理論を完成させました。 彼は本書において、数学的なモデルを用いることで、自由競争市場における価格メカニズムが資源配分を効率的に行うことを示し、市場経済の優位性を理論的に証明しようとしました。