## ワットの蒸気機関の改良
改良点1：分離凝縮器
ジェームズ・ワット以前の蒸気機関、特にニューコメン機関は、シリンダー内で蒸気を冷却して凝縮させていました。ワットはこの冷却過程がシリンダー自体を冷やし、次のサイクルで新たに蒸気を加熱する際に大きなエネルギー損失を生み出すことに気づきました。
そこでワットは1765年、シリンダーとは別の**分離凝縮器**を導入しました。これは、使用済みの蒸気をシリンダーから排出し、別の容器で冷却・凝縮させる仕組みです。これにより、シリンダーは高温に保たれ、熱効率が大幅に向上しました。
改良点2：動力源としての回転運動
ニューコメン機関は、ポンプのピストンを上下させる往復運動を動力源としていました。ワットは、この往復運動を回転運動に変換することで、より広範囲の機械を動かすことができると考えました。
彼は1781年、**太陽歯車と遊星歯車機構**を組み合わせた**サン・アンド・プラネタリーギア**を発明し、蒸気機関の回転運動を実現しました。これにより、工場の機械など、様々な用途に蒸気機関が利用できるようになりました。
改良点3：出力調整機構
初期の蒸気機関は、出力の調整が難しく、常に一定の速度でしか運転できませんでした。ワットは、蒸気機関の出力を安定させ、必要に応じて調整できるようにする機構を開発しました。
その一つが**遠心調速機**です。これは、回転速度が上がると錘が外側に広がり、蒸気の供給を絞ることで速度を自動的に調整する仕組みです。これにより、蒸気機関はより安全かつ効率的に運転できるようになりました。
その他の改良点
上記の主要な改良点以外にも、ワットは蒸気機関の性能向上と実用化に向けて、数多くの改良を行いました。
* **複動式機関**: シリンダーの両側に蒸気を交互に送り込むことで、出力を増加させました。
* **蒸気膨張の利用**: 蒸気をシリンダー内で膨張させることで、より効率的にエネルギーを利用できるようにしました。
* **指標馬力**: 蒸気機関の出力を表す単位として、馬力を導入しました。
これらの改良によって、ワットの蒸気機関は従来のものと比べて飛躍的に性能が向上し、産業革命の原動力として、工場生産や交通機関など、様々な分野で広く利用されるようになりました。