ワイルドの獄中記を面白く読む方法
ワイルドの人生と重ね合わせて読む
オスカー・ワイルドは、19世紀末のイギリスで最も注目を集めた劇作家であり、 dandyism（ダンディズム）を体現する有名人でした。しかし、スキャンダラスな裁判の末に投獄され、栄光は地に堕ちます。『獄中記』は、そんなワイルドが獄中で綴った、自らの魂の記録です。華やかな成功から一転、どん底を味わった彼の人生と重ね合わせることで、『獄中記』は単なる牢獄文学を超え、栄光と没落、絶望と希望といった普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
唯美主義と芸術観を理解する
ワイルドは「芸術のための芸術」を掲げる唯美主義運動を牽引した作家です。彼の作品は、道徳や社会的なメッセージよりも、美しさや感覚的な喜びを追求することに重きを置いていました。『獄中記』を読む際には、彼の作品全体を貫くこの唯美主義的な視点を意識することで、逆境にあっても美への希求を失わなかったワイルドの精神性をより深く理解することができます。
キリスト教思想と向き合う
『獄中記』には、聖書の引用やキリスト教思想への言及が数多く登場します。ワイルドは、幼い頃からキリスト教に親しんできた一方で、伝統的な教義には批判的な立場も示していました。獄中での苦悩と向き合う中で、彼は聖書やキリスト教と深く対峙し、独自の解釈を加えていきます。彼の内面における葛藤や信仰への複雑な思いを読み解くことで、『獄中記』はより深みのあるものとなります。
書簡という形式に注目する
『獄中記』は、大部分が獄中から友人への手紙という形式で書かれています。手紙という形式は、ワイルドの率直な心情や思考の変遷をありのままに伝える役割を果たしています。手紙の相手である友人との関係性や当時の社会状況を踏まえながら読み進めることで、ワイルドの言葉に込められた真意や隠喩を読み解くことができるでしょう。
時代背景を知る
『獄中記』は、19世紀末のヴィクトリア朝という時代を背景としています。当時のイギリス社会は、階級制度や道徳観念が厳格で、同性愛は犯罪とみなされていました。ワイルドが直面した苦難や社会からの断絶は、当時の社会状況と切り離して考えることはできません。ヴィクトリア朝時代の社会背景や価値観を理解することで、『獄中記』はより一層鮮やかに現代に蘇るでしょう。