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ローレンツの動物行動学の原点

## ローレンツの動物行動学の原点

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幼少期の自然体験と原体験

コンラート・ローレンツは、1903年オーストリアのウィーンに生まれました。幼少期をウィーン郊外のアルテンベルクで過ごしたローレンツは、豊かな自然環境の中で育ちました。彼は幼い頃から動物に強い興味を示し、様々な動物を飼育したり、観察したりして過ごしました。

ローレンツの自伝によれば、7歳の時に読んだゼルマ・ラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』に登場する、ガチョウに乗って空を飛ぶ少年ニルスに強い憧憬を抱いたことが、鳥類、特にガンやカモといった水鳥への強い興味につながったと言います。

また、10歳の頃に出会った、刷り込みの現象を示すハイイロガンの子に深い感銘を受けたことが、後の動物行動学研究の着想に大きな影響を与えたと言われています。

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比較行動学の誕生と発展

ローレンツは、動物の行動を、形態や生理機能と同様に、それぞれの種に特有な適応戦略の結果として捉え、系統発生と進化の観点から研究すべきだと考えました。彼はこの学問分野を「動物行動学」(Ethologie) と名付けました。動物行動学は、従来の心理学を中心とした動物の学習や行動の研究とは異なり、動物を自然環境の中で観察し、その行動の進化的な意義や機能を明らかにすることを目的としていました。

ローレンツは、1930年代後半からニコ・ティンバーゲンやカール・フォン・フリッシュらと共に動物行動学の発展に大きく貢献しました。彼らは、動物の行動を本能、生得的解発機構、鍵刺激、固定動作型といった概念を用いて説明しました。これらの概念は、動物の行動が、遺伝的にプログラムされた行動パターンと、環境からの特定の刺激によって引き起こされるメカニズムによって制御されていることを示唆するものでした。

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主要な研究対象と手法

ローレンツは、主に鳥類、特にハイイロガン、コクマルガラス、カワウなどを用いて、様々な行動、例えば、求愛行動、攻撃行動、集団行動、コミュニケーションなどを研究しました。彼は、動物を観察し、その行動を詳細に記録する、という手法を重視しました。

特に、ハイイロガンを用いた刷り込みに関する研究は、動物の初期発達における学習の重要性を示すものとして、大きな注目を集めました。また、コクマルガラスの社会行動に関する研究は、動物社会におけるコミュニケーションや個体識別の複雑さを明らかにしました。

ローレンツの研究は、動物の行動に対する理解を深め、動物行動学という新しい学問分野を確立する上で、重要な役割を果たしました。

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