ロックの寛容についての書簡が扱う社会問題
ロックの時代背景
ジョン・ロックが「寛容についての書簡」を執筆した17世紀後半のイギリスは、宗教改革以降、カトリックとプロテスタントの対立が激化し、社会は混乱と不安定な状況にありました。清教徒革命を経て王政が復活したものの、依然として宗教的な対立は根強く、国家による信仰の強制や、異端に対する迫害が行われていました。
「寛容についての書簡」で提起された問題
こうした時代背景の中、ロックは「寛容についての書簡」において、国家による信仰の自由への介入を批判し、宗教的な寛容の必要性を訴えました。ロックは、個人の良心と信仰は国家の権力を超越したものであり、いかなる権力も個人の内面を強制することはできないと主張しました。
国家と教会の分離
ロックは、国家の役割は市民の財産と身体を外敵や内乱から守ることであると定義し、個人の魂の救済は国家の権限外であるとしました。彼は、国家が特定の宗教を優遇したり、異端を弾圧することは、社会の秩序を乱し、かえって無秩序と紛争を引き起こすと考えました。
信教の自由と限界
ロックは、あらゆる宗教に対して無制限に寛容であるべきだと主張したわけではありません。彼は、カトリック教会のように、外国の君主への忠誠を誓う宗教や、社会の秩序を乱す危険性のある宗教に対しては、寛容であるべきではないと考えました。
「寛容についての書簡」の影響
「寛容についての書簡」は、出版当時大きな反響を呼び、その後の西欧社会における信教の自由の確立に大きな影響を与えました。ロックの思想は、アメリカ合衆国の独立宣言やフランス人権宣言にも影響を与え、近代市民社会における基本的人権の一つとして、信教の自由が認められる基盤となりました。