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ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の発想

ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の発想

古代史研究における革新的な視点:モダニズムと経済史

ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフ(1870-1952)は、古代史研究に革命をもたらした歴史家の一人として広く認められています。彼は、古代社会、特にヘレニズム時代(アレクサンドロス大王の死後からローマ帝国の台頭までの期間)を理解するために、従来の政治史や文化史中心のアプローチではなく、経済史と社会史を重視する必要性を強く主張しました。

「ヘレニズム世界」という概念の提唱

ロストフツェフ以前は、ヘレニズム時代は古典ギリシャの衰退期と見なされ、政治的混乱と文化の衰退に特徴付けられる時代とされてきました。しかし彼は、この時代をギリシャ文化がオリエント世界に広がり、融合することで、新たな文化圏が形成された時代として捉え直しました。彼が提唱した「ヘレニズム世界」という概念は、従来のギリシャ中心的な歴史観を打破し、地中海世界からオリエント世界までを含む、より広範な地域における歴史的変化を理解する上で重要な視点を提供しました。

都市と商業の役割に焦点を当てた分析

ロストフツェフは、ヘレニズム世界の社会経済構造を理解する上で、都市と商業の役割に特に注目しました。彼は、アレクサンドロス大王の東方遠征によって、ギリシャ人がオリエント世界に進出し、各地に植民都市を建設した結果、商業活動が活発化し、経済が発展したと論じました。また、彼は貨幣経済の発達、新しい交易ルートの開拓、商業を担う商人階級の台頭など、ヘレニズム時代の経済的変化についても詳細な分析を行いました。

社会構造の変化と階級闘争

ロストフツェフは、経済的な変化が社会構造にも大きな影響を与えたことを指摘しました。彼は、ヘレニズム時代には、従来の貴族や農民に加えて、商業で財を成した商人や金融業者など、新しい社会階層が台頭してきたことを明らかにしました。また、彼は、これらの社会階層間の経済的な格差が拡大し、社会不安や階級闘争を引き起こした可能性についても言及しています。

史料の広範な活用:考古学とパピルス文書

ロストフツェフは、彼の主張を裏付けるために、従来の歴史研究ではあまり重視されてこなかった考古学的資料やパピルス文書を積極的に活用しました。彼は、遺跡の発掘調査によって得られた遺物や、エジプトなどで発見されたパピルス文書の分析を通じて、ヘレニズム時代の経済活動、社会生活、文化などを具体的に描き出すことに成功しました。

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