ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の案内
ヘレニズム世界社会経済史とは
ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフが1941年に発表した著書で、紀元前4世紀から紀元後3世紀にかけてのヘレニズム時代の社会経済状況を包括的に分析したものです。原題は”The Social and Economic History of the Hellenistic World”です。
本書の内容
本書は全3巻からなり、膨大な史料に基づいて、政治史に偏りがちな従来の歴史観から離れ、経済活動や社会構造、文化交流など多角的な視点からヘレニズム世界を描写しています。
各巻の内容
* **第1巻:** アレクサンドロス大王の東方遠征からローマによるマケドニア征服までの政治史を概観し、ヘレニズム諸国家の成立過程や社会構造を解説しています。
* **第2巻:** ヘレニズム世界の経済活動に焦点を当て、農業、商業、手工業、金融など様々な分野における発展や変化を分析しています。
* **第3巻:** ギリシア文化とオリエント文化の融合であるヘレニズム文化について、都市、宗教、芸術、文学などの側面から考察しています。
本書の特徴
* **膨大な史料に基づく実証的な研究:** 碑文、パピルス文書、貨幣など、多様な史料を駆使し、当時の社会経済状況を具体的に描き出している点が特徴です。
* **社会経済史という新しい視点:** 従来の政治史中心の歴史観から脱却し、経済活動や社会構造に焦点を当てることで、ヘレニズム世界に対するより深い理解を促しました。
* **ヘレニズム世界の広がりを重視:** エジプトからインド北西部に至る広大な地域を視野に入れ、ギリシア文化とオリエント文化の相互作用を明らかにしました。
本書の評価
出版以来、ヘレニズム時代研究の金字塔として、学界に多大な影響を与えてきました。その後、新たな史料の発見や研究の進展により、一部内容の見直しも進んでいますが、ヘレニズム世界を理解する上で不可欠な古典として、現在も高い評価を受けています。