ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史の原点
ロストフツェフの生い立ちと学術的背景
ミハイル・イワノビッチ・ロストフツェフ(1870-1952)は、ウクライナの歴史家・考古学者であり、古代史、特にヘレニズム時代の研究で多大な業績を残しました。彼はロシア帝国時代の1870年に生まれ、サンクトペテルブルク大学で古典文献学を学びました。その後、古代史と考古学の研究に没頭し、1918年にはロシア革命を逃れてアメリカに亡命、ウィスコンシン大学やイェール大学で教鞭をとりました。
ヘレニズム世界への関心
ロストフツェフは、古代ギリシャ世界がアレクサンドロス大王の東方遠征によって大きく変容したことに強い関心を抱いていました。彼は、従来のギリシャ史研究が都市国家中心主義に偏っていると考え、東方世界との接触によって生まれた新しい文化や社会構造に注目しました。
社会経済史という視点
ロストフツェフは、ヘレニズム世界を理解する上で、政治史や文化史だけでなく、社会経済史的な視点が不可欠であると考えました。彼は、膨大な碑文やパピルス文書などを駆使し、当時の経済活動、社会構造、人々の生活などを詳細に分析しました。
主著『ヘレニズム世界社会経済史』
ロストフツェフの代表作である『ヘレニズム世界社会経済史』(The Social and Economic History of the Hellenistic World, 1941)は、3巻からなる大著で、ヘレニズム時代の社会経済史研究の金字塔とされています。