ロストフツェフのヘレニズム世界社会経済史に影響を与えた本
エドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」の影響
ミハイル・ロストフツェフの記念碑的著作「ヘレニズム世界社会経済史」は、アレキサンダー大王の死からローマによる地中海世界の征服までの時代に対する理解を形作った、20世紀の歴史学における画期的な研究です。広範な資料を駆使し、鋭い分析力を持つロストフツェフは、ヘレニズム時代を停滞と衰退の時代としてではなく、ギリシャ文化と東洋文化が融合し、経済と社会が大きく変化した変革の時代として描き出しました。ロストフツェフの作品に影響を与えた知的源泉は数多くありますが、エドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」は、特に彼の歴史観と分析手法に大きな影響を与えました。
ギボンの「ローマ帝国衰亡史」は1776年から1789年にかけて出版され、すぐに古典となり、その後のローマ史研究に多大な影響を与えました。ギボンは、ローマ帝国の衰退と崩壊を、内的要因と外的要因の複合的な作用の結果として説明しました。彼は、キリスト教の台頭、道徳の衰退、蛮族の侵略など、ローマの衰退を招いた多くの要因を挙げました。ロストフツェフはギボンの衰退という概念と、複雑な歴史的現象を説明するための多因子分析の使用に深く感銘を受けました。
ロストフツェフはギボンの衰退という概念をヘレニズム世界に適用し、アレキサンダー大王の後継国家を、衰退と堕落に向かう運命にある、ローマ以前のローマとして描写しました。しかし、ロストフツェフはギボンの悲観主義を共有せず、ヘレニズム時代を創造性と変革の時代と見ていました。彼は、ギボンの「衰退」を、社会が1つの段階から次の段階へ移行する、より大きな歴史的サイクルの一部と解釈しました。
ギボンの影響は、ロストフツェフが歴史資料を使用する方法にも見られます。ギボンは熱心な資料研究者であり、膨大な量の一次資料を収集して分析しました。彼は、文学作品、碑文、硬貨、考古学的遺物など、幅広い情報源を使用して、ローマ史のバランスの取れた包括的な説明を作り上げました。ロストフツェフは、ギボンの多面的なアプローチを採用し、経済、社会、文化、政治を含むヘレニズム世界を理解するために、さまざまな証拠をまとめました。
さらに、ギボンの鮮やかな筆致と魅力的な物語はロストフツェフに感銘を与えました。ギボンは、歴史を単なる事実や日付の羅列ではなく、読者を魅了し、過去から学ぶことを促す魅力的な物語として提示する能力で有名でした。同様に、ロストフツェフは魅力的な筆致で歴史を書くよう努め、複雑なアイデアを明確かつ簡潔に伝えていました。彼の作品は、学術的な厳密さと、幅広い読者に届くことを目的とした物語の才能を兼ね備えている点が評価されています。
結論として、エドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」は、ミハイル・ロストフツェフの「ヘレニズム世界社会経済史」に大きな影響を与えました。ギボンの衰退という概念、多因子分析の使用、歴史的証拠の使用、魅力的な物語のスタイルは、ロストフツェフ自身の作品を形作り、ヘレニズム時代に対する彼の解釈に影響を与えました。ロストフツェフはギボンのすべての結論に同意したわけではありませんが、彼の作品は、古代史に対する彼の考え方を形作り、20世紀で最も影響力のある歴史家の1人としての地位を確立するのに役立ったことは間違いありません。