# ルターのキリスト者の自由を深く理解するための背景知識

１．中世末期の教会と社会

ルターが活躍した１６世紀初頭は、中世末期にあたります。この時期の西ヨーロッパ社会は、ローマ・カトリック教会が大きな影響力を持つキリスト教社会でした。人々の生活は教会の教えと儀式に深く結びついており、教会は宗教的な権威だけでなく、政治や経済、文化にも大きな影響力を持っていました。

２．免罪符問題

中世の教会は、罪を犯した人が神の罰を免れるためには、告解や善行などの償いが必要であると教えていました。しかし、１６世紀初頭には、金銭を支払うことで罪の償いができるとする「免罪符」の販売が盛んに行われるようになりました。免罪符は、教会の財政を潤すための方策として利用され、一部の聖職者や商人によって乱用されていました。

３．ルターの宗教改革

ルターは、免罪符の販売をはじめとする教会の腐敗に強く反対し、１５１７年に「９５ヶ条の論題」を発表しました。ルターは、聖書のみが信仰の拠り所であるとし、教会の権威や伝承を否定しました。また、人は信仰のみによって義とされ、救われると主張しました。ルターの主張は、当時の教会の権威に挑戦するものであり、宗教改革と呼ばれる大きな運動のきっかけとなりました。

４．ルターの神学思想

ルターの神学思想の中心には、「信仰義認」という考え方があります。これは、人は神の恵みとキリストへの信仰によってのみ義とされ、救われるという考えです。ルターは、人間は生まれながらにして罪深く、自らの力では神に近づくことができないとしました。しかし、神はイエス・キリストの十字架による贖罪を通して、人間に無償の愛を与え、義と認めてくださるとしました。

５．「二つの国」の概念

ルターは、「二つの国」という概念を用いて、世俗の権力と教会の権力の関係を説明しました。ルターは、神は世界を「霊の国」と「世俗の国」の二つに統治しているとしました。「霊の国」は信仰によって支配され、教会がその役割を担います。「世俗の国」は理性と法によって支配され、世俗の権力者がその役割を担います。ルターは、この二つの国はそれぞれ独立した領域を持ち、互いに干渉すべきではないと考えました。

６．「キリスト者の自由」の背景

「キリスト者の自由」は、ルターが１５２０年に発表した著作です。この著作でルターは、信仰によって義とされたキリスト者は、すべての束縛から解放され、真の自由を得たと主張しました。しかし、この自由は自己中心的なものではなく、神と隣人への愛に基づいた自由であるとしました。ルターは、キリスト者は信仰によって内面的に自由であると同時に、愛によって隣人に仕える義務があるとしました。

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