## ルソーの学問芸術論の美
ルソーの「学問芸術論」は、一見すると学問と芸術を批判する作品に見えますが、その根底には、彼が考える理想的な社会、そして人間のあるべき姿が明確に示されています。本稿では、作品全体を通して読み取れるルソーの美学、特に道徳と深く結びついた美の概念について解説します。
###
美と徳の関係
ルソーは、真の美は外面的なものではなく、人間の内に宿る徳と密接に関係していると説きます。彼は当時の社会を、虚栄心や贅沢によって腐敗した状態だとみなし、学問や芸術もまた、その腐敗に加担し、人々を堕落させていると批判しました。
###
自然な状態への憧憬
ルソーは、「人間は本来善であり、自然状態においては自由で平等であった」という「自然状態」の概念を提唱しました。そして、文明の発達によって人間は自然から離れ、不平等や腐敗が生じたと考えました。彼の美学においても、自然な状態、つまり飾り気のない素朴な美しさが重視されます。
###
感情の重視
ルソーは、理性よりも感情を重視する思想を持っていました。彼の考える美は、知性によって分析されるものではなく、人間の心に直接訴えかける、素朴で力強いものでした。それは、自然の風景や、人間の純粋な感情表現の中に見出すことのできる美でした。
###
簡素さと真実性
ルソーは、当時の芸術に見られたような過剰な装飾や技巧を嫌悪し、簡素で真実味のある表現を高く評価しました。それは、彼の道徳観とも深く結びついており、外面的な虚飾を捨て去り、内面の美しさを追求することが重要だと考えられていたからです。
これらの要素を通して、ルソーの「学問芸術論」における美学は、単なる美的感覚の追求を超え、人間性や道徳、そして社会全体への深い洞察に根ざしたものとして理解することができます。