## ルソーの学問芸術論の案内
ジャン=ジャック・ルソーの **
『学問芸術論』
(Discours sur les sciences et les arts) は、1750年にディジョンアカデミーの懸賞論文として提出され、ルソーに名声をもたらした作品です。この論文でルソーは、「学問と芸術の復興は風俗の浄化に貢献したか」という問いに「否」と答え、当時の常識を覆しました。
### 論文の内容
ルソーは、
学問や芸術の発展は、人間を堕落させた
と主張します。彼によれば、学問や芸術は、贅沢、虚栄心、偽善といった悪徳を助長し、人間の自然な状態を損なうものでした。ルソーは、古代ギリシャやローマ、そして原始社会を例に挙げ、学問や芸術が未発達であった時代こそが、人間がより自然で幸福な状態にあったと論じます。
### ルソーの主張の根拠
ルソーは、人間の自然な状態は、自己保存と憐れみという二つの情念によって支配されていると考えました。自己保存は、自分自身の生命や安全を守るための本能的な欲求であり、憐れみは、他者の苦痛を理解し、共感する能力です。ルソーによれば、文明社会においては、学問や芸術がこれらの自然な情念を腐敗させ、人間を利己的で冷酷な存在に変えてしまうと主張しました。
### 影響
『学問芸術論』は、当時のヨーロッパ社会に大きな衝撃を与え、多くの論争を巻き起こしました。ルソーの主張は、啓蒙主義の楽観的な人間観に対する痛烈な批判として受け止められ、その後のロマン主義や社会思想に大きな影響を与えました。