## ルソーの学問芸術論の感性
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感性と理性
ルソーは、理性のみを重視する啓蒙主義の風潮に異を唱え、人間にとって感性が不可欠であると主張しました。「学問芸術論」においても、理性よりも感性を優先する立場を明確にしています。ルソーは、感性を道徳の源泉と捉え、感性によって人は善悪を判断し、他者への同情や共感を持つことができると考えました。
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自然状態における感性
ルソーは、「人間不平等起源論」で展開した「自然状態」の概念を踏まえ、「学問芸術論」においても、文明以前の自然状態における人間は、感性が純粋な形で現れていたと論じています。自然状態の人間は、自愛と憐憫の情に導かれ、他者に危害を加えることなく平和に共存していました。しかし、文明の発達とともに、感性は理性や社会制度によって抑圧され、歪められてしまったとルソーは考えています。
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感性の堕落
ルソーは、学問や芸術が感性を堕落させたと批判します。学問は虚栄心を生み出し、芸術は贅沢や享楽を助長すると考えたのです。そして、それらは人間本来の自然な感性を鈍らせ、道徳の腐敗を招くと主張しました。
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感性の回復
ルソーは、感性を回復することが重要であると訴えます。しかし、完全に文明を否定し、自然状態に回帰することは不可能です。そこでルソーは、「エミール」などの著作で、自然に近い形で感性を育む教育の重要性を説いています。