## ルソーの告白から学ぶ時代性
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18世紀ヨーロッパの社会と文化
ルソーの『告白』は、18世紀ヨーロッパの社会と文化を理解する上で貴重な資料となります。当時のヨーロッパは、啓蒙主義と呼ばれる思想運動が盛んになり、理性や科学に基づいた社会の実現が求められていました。人々は、それまでの封建社会や宗教的な権威に疑問を抱き始め、自由や平等といった新しい価値観を求めるようになっていました。
ルソー自身も、啓蒙主義の影響を強く受けた思想家の一人でした。彼は、人間は本来自由で平等な存在であると主張し、社会契約論を通じて、個人の自由と社会秩序の両立を目指しました。しかし一方で、ルソーは、理性一辺倒の啓蒙主義に批判的な側面も持っていました。彼は、人間の感情や感覚の重要性を説き、自然に回帰することの大切さを訴えました。
『告白』において、ルソーは自らの生い立ちや恋愛経験、そして思想家としての苦悩などを赤裸々に綴っています。そこには、当時の社会における階級差別や貧富の格差、恋愛や結婚に対する価値観など、18世紀ヨーロッパ社会の現実が鮮やかに描かれています。
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個人の内面への関心の高まり
ルソーの『告白』は、個人の内面世界を深く掘り下げた作品としても画期的でした。それまでの自伝文学は、偉人や英雄の功績を称えることに重点が置かれており、個人の内面や感情はあまり重視されませんでした。
しかし、ルソーは、『告白』において、自らの内面を徹底的に分析し、その光と影をありのままに描き出しました。彼は、自分の弱さや醜さ、矛盾や葛藤さえも隠すことなく告白することで、人間存在の真実を追求しようとしました。
このようなルソーの姿勢は、当時の文学や思想に大きな影響を与え、後のロマン主義の隆盛にもつながっていきます。ロマン主義は、人間の感情や想像力を重視する芸術運動であり、ルソーの『告白』はその先駆けとも言える作品です。