ルソーの人間不平等起源論の構成
第一部
第一部は、「人間の間にはどのような不平等が自然によって設定されているか、また自然法はどのような不平等を認めているか、ジュネーヴ共和国市民であるルソーが、名高い、賢明なる共和国市民たるあなたがたに敢えて問う」という有名な問いかけから始まります。
ルソーはまず、人間社会における不平等の起源を探求するためには、人間を自然状態において考察する必要があると述べます。そして、自然状態における人間は、自己保存と憐れみの情という二つの原理に導かれていると主張します。自己保存の原理は、人間が自分の生命と安全を確保するために必要な行動をとることを促し、憐れみの情は、他者の苦痛を見て、それを和らげようとする気持ちを引き起こします。
ルソーは、自然状態における人間は、文明化された人間よりも強く、健康であり、また精神的にもより幸福であったと論じます。自然状態の人間は、所有欲や支配欲を持たず、他者と争うこともありません。しかし、ルソーは、自然状態は永遠に続くものではなく、いくつかの要因によって崩壊せざるを得なかったと述べています。
第二部
第二部では、自然状態から社会状態への移行と、それに伴う不平等の発生が描かれます。ルソーによれば、人間が社会を形成するようになったのは、自然災害や他の人間集団との争いなどの外的要因によるものです。
社会の形成とともに、私有財産、労働の分業、家族などの制度が生まれ、これらが不平等の起源となります。特に、私有財産制の導入は、人間関係を根本的に変え、所有する者と所有しない者の間に大きな格差を生み出します。
ルソーは、社会の進歩とともに不平等が拡大し、固定化していく過程を、歴史的な事例を交えながら具体的に示していきます。そして、現代社会における富の集中、権力の濫用、社会的不正義などを批判し、人間の堕落を嘆きます。