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ルソーの『エミール』に影響を与えた本

ルソーの『エミール』に影響を与えた本

プルーターク英雄伝

古代ギリシャやローマの著名な政治家や軍人の伝記を対比して描いたプルータークの『英雄伝』は、ルソーの教育論の根幹をなす人間の徳性への強い関心に大きな影響を与えました。ルソーは、当時の社会が堕落し、人間本来の善良な nature(自然)からかけ離れていると考えていました。

『エミール』の中で、ルソーは人間形成において社会の影響を極力排除し、自然の中で子供を育てることの重要性を説いています。これは、外面的・人工的なものに染まっていない古代ギリシャ・ローマの人々の生き様を描いた『英雄伝』から強い影響を受けた結果と言えます。

特に、『英雄伝』に登場する人物たちの勇敢さ、正義感、自己犠牲の精神といった高潔な精神は、ルソーの理想とする人間像と重なり合います。エミールが自然の中で、理性や道徳心を育む過程は、『英雄伝』で描かれる英雄たちの生き様を模倣することで、真の人間性を獲得させるというルソーの意図が込められていると言えるでしょう。

例えば、ルソーはエミールの教育において、古代スパルタの厳しい教育を参考にしていますが、これは『英雄伝』におけるスパルタの立法者リュクルゴスの伝記から着想を得た可能性があります。リュクルゴスは、私利私欲を捨て、共同体への奉仕を重んじる Spartan spirit を体現する人物として描かれており、ルソーはエミールにも同様の精神を育みたいと考えていたと考えられます。

このように、『英雄伝』は、ルソーが『エミール』で提示した教育論の根底にある人間観、道徳観に大きな影響を与えただけでなく、具体的な教育方法にも影響を与えた重要な著作と言えるでしょう。

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