## ルソーの「孤独な散歩者の夢想」の美
「自然との一体感」における美
ルソーは自然の中に身を置くことで、社会の束縛から解放され、ありのままの自分自身と向き合うことができたと述べています。「孤独な散歩者の夢想」には、自然の描写を通して、彼の深遠な自然愛と、自然と一体となることで得られる心の平安が表現されています。
たとえば、彼は植物採集に熱中する中で、自己と外界との境界が曖昧になっていく感覚、すなわち自然と一体化していくような感覚を味わったと記しています。彼は自然の中に身を置くことで、自己の矮小さと同時に、宇宙の壮大さを感じ取ることができたのです。
「夢想」がもたらす美
ルソーにとって「夢想」は、現実の苦悩から逃れるためだけの手段ではなく、自己と深く対話し、真実の幸福を見出すための重要なプロセスでした。彼は「夢想」を通して、過去の記憶を辿り、現在を見つめ直し、未来へと繋がる自身の内面世界を深く掘り下げていきます。
彼の「夢想」は、単なる空想の世界に留まらず、自己の真実を探求する真摯な姿勢と、人間存在の本質を見据えようとする哲学的な深みを持っている点が特徴です。
「告白」としての美
「孤独な散歩者の夢想」は、ルソー自身の晩年の孤独な状況を背景に、自身の内面を赤裸々に告白した作品でもあります。彼は自身の生い立ち、性格、人間関係における葛藤などを率直に綴ることで、読者に対して自身の内面をありのままに開示しようと試みています。
彼の告白は、自己弁護や自己正当化のためではなく、人間存在の弱さや矛盾をも率直に認め、受け入れることで、自己と和解しようと苦悩する人間の姿を真摯に描き出しています。