## ルクセンブルクの資本蓄積論の思考の枠組み
ローザ・ルクセンブルクは、その主著『資本蓄積論』(1913年)において、カール・マルクスの資本論を継承しつつも、独自の帝国主義論を展開しました。彼女の思考の枠組みは、マルクスの資本主義分析を土台としながら、独自の視点と論理によって構築されています。
マルクス主義の継承と批判
ルクセンブルクは、マルクスの資本論を高く評価し、その基本的な分析枠組みを継承しました。特に、資本主義社会における **剰余価値の生産と搾取の構造**、そしてそれがもたらす **資本主義経済の矛盾と危機** については、マルクスの洞察を基盤としています。
しかし、彼女は同時に、マルクスの資本論にはいくつかの問題点や限界があると批判しました。特に、**資本主義経済の再生産** に関するマルクスの分析は、資本主義経済がどのようにして剰余価値を **実現** し、拡大再生産を行っていくのかという点について、十分な説明を与えていないと彼女は考えました。
資本蓄積と非資本主義圏
ルクセンブルクは、資本主義経済が剰余価値を実現し、蓄積を継続していくためには、 **非資本主義圏の存在が不可欠である** と主張しました。
マルクスは、資本主義経済内部における **労働者階級と資本家階級の階級闘争** が、資本主義の発展と危機の根本的な要因であると分析しました。一方、ルクセンブルクは、資本主義経済は、その外部に存在する **非資本主義経済(前資本主義的経済や植民地など)との関係** においても、剰余価値の実現と蓄積の条件を見出していました。
彼女は、資本主義経済が生産する剰余価値をすべて資本主義経済内部で消費することは不可能であり、その一部を **非資本主義圏に売り込む** ことによって初めて、剰余価値の実現とさらなる蓄積が可能になると考えました。
帝国主義の必然性と危機
ルクセンブルクは、資本主義経済の拡大と非資本主義圏への進出は、必然的に **帝国主義** をもたらすと主張しました。資本主義経済は、剰余価値の実現と蓄積のために、絶えず新たな市場と投資先を求めて、非資本主義圏を侵略し、植民地化していくというのです。
そして、この帝国主義的な拡大は、最終的に **資本主義経済自身の危機** をもたらすとルクセンブルクは予測しました。非資本主義圏をすべて資本主義化してしまうと、資本主義経済は剰余価値を売り込む先を失い、深刻な危機に陥ると彼女は考えました。
ルクセンブルクの資本蓄積論は、マルクス主義経済学に独自の視点を導入し、帝国主義の分析において重要な貢献を果たしました。彼女の思考の枠組みは、現代の資本主義経済やグローバリゼーションを理解する上でも、多くの示唆を与えてくれるものです。