Skip to content Skip to footer

ルカーチの歴史と階級意識の対極

## ルカーチの歴史と階級意識の対極

###

カール・ポッパー「開かれた社会とその敵」

カール・ポッパーの「開かれた社会とその敵」(1945年)は、全体主義や歴史主義を批判し、個人主義と批判的理性主義に基づく「開かれた社会」を擁護した書です。ルカーチの「歴史と階級意識」とは、歴史観、社会観、方法論において対照的な立場を示しています。

**1. 歴史観における対立:歴史法則 vs 歴史の偶然性**

ルカーチは、ヘーゲルやマルクスの影響を受け、歴史には必然的な法則性があり、プロレタリアートの階級闘争によって共産主義社会が実現するという歴史決定論を主張しました。

一方、ポッパーは、歴史に必然的な法則や目的は存在せず、歴史は人間の予測を超えた偶然的な出来事によって影響を受けると考えました。彼は、歴史決定論は全体主義のイデオロギーを正当化する危険性があると批判しました。

**2. 社会観における対立:全体主義 vs 開かれた社会**

ルカーチは、プロレタリアートの階級意識が「階級にとっての自己自身」となり、歴史の主体として革命を導くと考えました。彼の思想には、全体のために個人が従属するという全体主義的な傾向が見られます。

対照的に、ポッパーは、個人主義と自由主義に基づく「開かれた社会」を理想として掲げました。開かれた社会では、批判と反論を通じて社会が進歩し、個人の自由と尊厳が保障されます。

**3. 方法論における対立:弁証法 vs 批判的合理主義**

ルカーチは、ヘーゲル弁証法を歴史や社会の分析に応用しました。弁証法は、矛盾や対立を通じて真理に到達する方法論ですが、ポッパーは、弁証法は曖昧で非科学的であると批判しました。

ポッパーは、科学的方法の特徴は反証可能性にあると考え、仮説は反証される可能性に開かれているべきだと主張しました。彼は、社会理論においても批判的合理主義に基づき、反証を通じて真理に漸近していくべきだと考えました。

このように、「歴史と階級意識」と「開かれた社会とその敵」は、歴史観、社会観、方法論において対照的な立場を表明しており、20世紀の思想界を代表する対立軸の一つを形成しています。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5