## リースマンの孤独な大衆の構成
### 第一部 歴史的転換点における性格
まずリースマンは、本書の主題である「孤独な大衆」の分析のために、「伝統指向型」「内部指向型」「他人指向型」という三つの社会類型を提示します。これは、歴史的な人口変化と社会構造の変遷に対応して、人間の性格構造がどのように変化してきたかを説明するための概念的な枠組みです。
* **伝統指向型**: 高出生率と高死亡率が特徴の社会において支配的な性格類型。伝統的な価値観や慣習に強く束縛され、集団への同調圧力が強い。
* **内部指向型**: 近代社会への移行期に現れる性格類型。自己の内面に価値観や行動規範を見出し、自律性と独立性を重視する。
* **他人指向型**: 人口増加が落ち着き、高度に消費社会化した現代社会において支配的な性格類型。周囲の人々からの承認や同調を強く求め、柔軟性と社交性を持ち合わせる。
### 第二部 他人指向型の出現
ここでは、他人指向型の性格構造が現代社会においてどのように形成され、その特徴が具体的にどのような行動様式に現れるのかを、様々な社会集団(例えば、都会の労働者階級、郊外の中流階級、企業組織人など)を例に挙げながら詳細に分析します。
特に、現代社会における大衆文化、メディアの影響力の増大、消費主義の蔓延が、他人指向型の形成と深く関連していることを指摘します。
### 第三部 他人指向型の政治
ここでは、他人指向型の性格構造が政治参加や民主主義のあり方にどのような影響を与えるかを考察します。 リースマンは、他人指向的な人々が政治に対して無関心になりがちであり、政治的指導者に対して受動的な態度をとる傾向があることを指摘します。
その一方で、他人指向的な人々が、社会的な正義や平等に関心を持ち、政治参加を通じて社会を変革しようとする可能性も示唆します。
### 第四部 孤独な大衆
最終章では、他人指向がもたらす「孤独」という問題に焦点を当てます。 リースマンは、他人指向的な人々が、周囲の人々との表面的で希薄な人間関係に陥りやすく、真の意味での心のつながりを求めて孤独感を抱えがちであることを指摘します。
そして、現代社会における人間関係のあり方、自己実現の可能性、真の意味での自由とは何かという問いを投げかけます。
以上が、「孤独な大衆」の基本的な構成です。