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リースマンの「孤独な大衆」とアートとの関係

## リースマンの「孤独な大衆」とアートとの関係

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リースマンの議論における「伝統指向型」とアート

リースマンは、「孤独な大衆」の中で、社会の変遷に伴い、人間の性格構造が「伝統指向型」「内部指向型」「他人指向型」の3つへと変化してきたと論じました。

伝統指向型は、前近代社会に見られる性格構造で、伝統的な価値観や慣習に強く束縛され、集団への帰属意識が強いことが特徴です。

伝統指向型の社会におけるアートは、宗教や儀礼と密接に結びついており、集団の価値観や規範を表現する役割を担っていました。絵画、彫刻、音楽、演劇など、あらゆる芸術作品が、伝統的なモチーフや様式を踏襲し、集団の結束を促すものでした。

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「内部指向型」とアートにおける個性の発露

内部指向型は、近代社会に台頭した性格構造で、自己の内部に確固たる価値基準を持ち、自律的に行動することを重視します。

内部指向型の社会では、アートは個人の感情や思想を表現する手段として認識されるようになり、作家や芸術家の個性が重視されるようになります。

ルネサンス以降、西洋美術においては、写実主義や遠近法の発展、宗教画からの脱却など、個性を重視する作品が増加しました。音楽においても、バッハやモーツァルトなど、個々の作曲家の作風が明確に現れるようになりました。

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「他人指向型」と大衆社会におけるアートの変容

リースマンが「孤独な大衆」で主に焦点を当てた他人指向型は、現代社会に特徴的な性格構造で、周囲の人間関係や社会からの承認を強く意識し、周囲に同調しようとします。

他人指向型が支配的な大衆社会において、アートは、大量生産・大量消費の対象となり、娯楽性や商業主義が重視される傾向にあります。

映画、テレビ、ポピュラー音楽など、大衆文化は、他人指向的な価値観を反映し、多くの人々に受容されるように作られています。また、広告やファッションなど、日常生活においても、アートは大衆を操るための手段として利用されるようになっています。

リースマンは、「孤独な大衆」において、他人指向型の蔓延によって、個人の自律性や創造性が失われつつあることを危惧しました。アートの領域においても、画一的な大衆文化が横行し、真に創造的な作品が生み出されにくくなっている可能性は否定できません.

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