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リーのアラバマ物語の技法

リーのアラバマ物語の技法

子供の視点

 ハーパー・リーは、物語を語る上で、主人公のスカウト・フィンチの子供時代の視点という技法を用いています。物語はスカウトの子供らしい無邪気で偏見のない視点から語られるため、読者は人種差別や偏見といった複雑な問題を、新しい視点から捉え直すことができます。
 例えば、スカウトは、白人と黒人の間に明確な境界線が存在することを理解していません。彼女は、黒人の家政婦であるカルパーニアを家族同然に慕い、白人の子供たちと分け隔てなく遊んでいます。
 このようなスカウトの純粋な視点は、当時の社会に根強く存在していた人種差別や偏見を浮き彫りにすると同時に、読者に先入観や偏見を捨てて、物事をありのままに見つめ直すことの大切さを教えてくれます。

南部ゴシック様式

 リーは作品全体にわたり、南部ゴシック様式を取り入れています。この様式は、グロテスクな要素、神秘主義、そして社会における衰退の雰囲気を特徴としています。リーはこれらの要素を用いることで、物語に不気味な雰囲気を与え、読者の不安感を高めています。
 例えば、物語の中で重要な役割を果たす、謎の人物ブー・ラドリーの存在は、南部ゴシック様式の典型的な要素と言えるでしょう。ブーは、長い間、家の外に出ようとせず、近所の人々から恐れられています。彼の存在は、物語に謎と不安感を漂わせ、読者の好奇心を掻き立てます。

対比

 リーは、物語の中で様々な対比を効果的に用いています。例えば、スカウトの無邪気さと、大人たちの偏見や差別、アティカスの冷静さと、ボブ・ユウェルの狂気などです。
 これらの対比を通して、リーは、善と悪、正義と不正義、理性と感情といった、普遍的なテーマを浮き彫りにしています。
 特に、裁判のシーンにおける、アティカスとボブの対比は印象的です。アティカスは、冷静沈着に、証拠に基づいてトムの無実を訴えます。一方、ボブは、感情的に、偏見に満ちた証言を繰り返します。
 リーは、これらの対比を通して、読者に、真の勇気とは何か、正義とは何かを問いかけているのです。

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