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リヴィウスのローマ建国史を深く理解するための背景知識

リヴィウスのローマ建国史を深く理解するための背景知識

リヴィウスとローマ建国史

ティトゥス・リウィウス(紀元前59年 – 紀元後17年)は、ローマ帝国初期の歴史家であり、その代表作である「ローマ建国史」(アブ・ウルベ・コンディタ・リブリ)で広く知られています。この作品は、ローマの建国神話から紀元前9年のドルーススの死までを叙述した、全142巻に及ぶ大作です。しかしながら、現存しているのは35巻のみで、残りは断片や後世の要約によってその内容を知ることができます。リウィウスはアウグストゥス帝の治世下に活躍し、帝政ローマ初期の思想や文化を反映した歴史観を持っていたと考えられています。

ローマの建国神話と初期の歴史

ローマ建国史は、トロイア戦争の英雄アイネイアスの末裔であるロムルスとレムスによるローマ建国神話から始まります。双子は捨て子としてテヴェレ川に流されますが、雌狼に育てられ、後にローマを建設します。この神話は、ローマの起源をギリシア神話に結びつけ、都市の古さと正当性を強調する役割を果たしていました。ローマ初期の歴史は、王政時代(紀元前753年 – 紀元前509年)から始まり、ロムルスをはじめとする7人の王がローマを支配したとされています。この時期の歴史は、考古学的証拠が乏しく、伝説や伝承が多く含まれているため、史実とフィクションを区別することが困難です。

共和政ローマの成立と発展

紀元前509年、最後の王タルクィニウス・スペルブスが追放され、ローマは共和政へと移行します。共和政ローマは、貴族階級であるパトリキと平民階級であるプレブスから構成され、元老院、民会、執政官などの政治機関によって運営されていました。初期の共和政は、パトリキとプレブスの身分闘争によって特徴づけられます。プレブスは、政治参加の拡大や経済的な権利を求めて、パトリキと対立し、徐々に権利を獲得していきました。紀元前4世紀には、ローマはイタリア半島における覇権を確立し、その後、地中海世界へと勢力を拡大していきます。

ポエニ戦争とローマの覇権

紀元前3世紀から2世紀にかけて、ローマはカルタゴと3度にわたるポエニ戦争を戦います。第一次ポエニ戦争(紀元前264年 – 紀元前241年)では、シチリア島を巡って争い、ローマが勝利します。第二次ポエニ戦争(紀元前218年 – 紀元前201年)では、ハンニバル率いるカルタゴ軍がイタリア半島に侵入し、ローマに大打撃を与えますが、最終的にはローマが勝利します。第三次ポエニ戦争(紀元前149年 – 紀元前146年)では、ローマがカルタゴを完全に滅ぼし、地中海世界の覇権を確立します。

共和政の危機と内乱

ローマの領土拡大は、社会構造に大きな変化をもたらしました。海外からの富の流入は、一部の貴族をさらに富ませる一方で、中小農民は没落し、貧富の差が拡大しました。また、属州からの安い穀物の流入は、イタリアの農業を衰退させ、失業者を増加させました。これらの社会問題を背景に、グラックス兄弟による改革運動が起こりますが、失敗に終わります。その後、マリウスとスッラの内乱、カエサルとポンペイウスの内乱など、ローマは内乱の時代へと突入します。

帝政ローマの成立

紀元前27年、オクタウィアヌスは、元老院からアウグストゥスの称号を与えられ、事実上の皇帝となります。これにより、共和政は終焉を迎え、帝政ローマが成立します。アウグストゥスは、内乱によって疲弊したローマに平和と秩序をもたらし、ローマ帝国の基礎を築きました。リウィウスは、アウグストゥスの治世下に「ローマ建国史」を執筆し、共和政の理想と帝政の現実を結びつけようとしたと考えられています。

ローマの宗教と文化

ローマ人は、多神教を信仰し、ユピテル、ユーノー、マルスなどの神々を崇拝していました。宗教は、ローマ人の生活のあらゆる面に深く浸透しており、政治、軍事、社会など、様々な場面で重要な役割を果たしていました。ローマ文化は、ギリシア文化の影響を強く受けており、文学、哲学、美術、建築など、様々な分野で独自の文化を築き上げました。ローマ建国史には、ローマ人の宗教観や文化、社会生活に関する記述が多く含まれており、当時のローマ社会を理解する上で貴重な資料となっています。

ローマ史研究におけるリウィウスの建国史

リウィウスの「ローマ建国史」は、ローマの歴史を知る上で欠かせない重要な資料です。しかしながら、リウィウスは歴史家であると同時に、優れた物語作家でもありました。そのため、彼の作品には、歴史的事実だけでなく、伝説や伝承、修辞的な表現が多く含まれています。リウィウスの建国史を読む際には、歴史的な資料としての価値と同時に、文学作品としての側面にも注意を払う必要があります。現代のローマ史研究では、考古学的資料や他の史料との比較検討を通じて、リウィウスの記述の正確性を検証し、当時のローマ社会をより深く理解しようとする試みが続けられています。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。

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